死ぬ前にしたい1のコト




は………………?



「それ、覚えてないふり? でもさー、酔ってて覚えてませんって重罪だよねー。男女逆だったら、許されないでしょ? でも、女の人だってそうだよ。ねえ? 」

「本当にそんなこと言ったの……わたし……? 」

「まだそんなこと言ってるの。恥の上塗り可哀想だと思って、言わないであげようと思ったんだけど。じゃあ、言うね? 」


――仕事、全然上手くできなくて。

YES。

――彼氏、いなくて。

YES。

――どころか、この歳で男と付き合ったことなくて。

イ、イエ……。


――こうなったら、死ぬまでに一回くらい。

……ぃ……。


「――セックスしときたいな、って思ってその辺にいた俺に頼んだんじゃなかったっけ? 」

「……っ、いい! わっわかっ、っったから……!! 」


事実だ。
現実だ。
欲望が。


「でもさ。オヤジとかじゃなくて、俺に声掛けたあたり、結構しっかりしてたんじゃないの。本当に酔っぱらってたのかな。それこそ、ふりだったりして」


――訳分からん形というか、無形で実現、してしまった。


「……酔っぱらってたけど。でも、ごめん。この期に及んで、本当に誰でもいいってわけじゃなかったみたい」


何がみっともないって、それだ。
恋愛諦めて、好きな人じゃなくてもいいや、なんて思いながら。
ダメもとでこんな若くて格好いい子に声を掛けるなんて、本当しっかり選んでる。
酔っぱらって捨てられたのは、欲望や願望への羞恥だけだ。

知ってはいたけど、私、最低最悪のダメ人間じゃん。


「……謝ることないよ。だって、何してもいいって約束だったし。そこまで本人が捨て身なら、ある程度別にいいんじゃね。大人同士、合意の上なんだから」

「え」


今、何て言った?
ごくごく僅か、光が見えたような。


「成人済の社会人。よかったね? 」

「……そ、そう……」


よかった。まじでよかった。
いや、それでも犯罪感拭えないけど。


「……一華さんさ、どんだけ馬鹿? 何でそれで小躍りしそうになってんのさ。酷いことされてたかもしれないし、殺されてたかもしれないんだよ。そんな勇気あるんなら、他にやりようあるでしょ」

「……そうだよね。そのとおり、だけど」


実……くんには分からないよ。
困ったこと、ないでしょ。



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