死ぬ前にしたい1のコト
実くんがしたくて、何も分からない私がされたいのなら、入り口はどこにでもある。経路だって、どうとでも。
「みのりくん」
これ以上キスが下がったら、立ってなんかいられない。
一度だけぎゅっと握って、後は優しく包んでいてくれていた手に訴えると、再び唇を塞がれた。
酸素が足りない。
でも、形ばかり逃げようとする舌を捕まえられても、酸欠というには余裕がある。
昼間の、ユウとのこと思い出して、いけないことだと身体が硬直した。
「……今、ユウさんのこと考えたでしょ。分かるよ。どっちが気持ちいいか、比べてた? 」
「ちが……っ」
「ユウさんの顔がちらついたのが? それとも、比較してたのが? 」
下手なりに、私もキスなんてできるんだなって。
少しずつ、ちゃんと呼吸できるようになっていくのは、初めてじゃないのと――相手が実くんだからなんだろうって。
「違う? ……嘘。だって、ほら」
「……っ」
嘘じゃない。
それこそ、だってほら、だよ。
「さっきまでは、微妙に逃げるふりしてたのに……急に、無抵抗になった」
今、外されたのが。
締め付けがなくなって、脳裏を過ったのが。
今日、何着てたっけ。大丈夫かな――初めてのくせに、そんなこと思えるのは。
「悪いこと、考えてたからでしょ。ねえ、一華さ……」
「すき」
実くんが、好きだからだ――そう、身体から脳にシグナルが逆流してる。
「みのりくんが好き」
服の中で指が触れて、声が震える。
でも、ビクンと反応したのは、なぜか私じゃなかった。
「みのりくん……? 」
何か、おかしなことをしちゃったかな。
途中で止めちゃうほど、萎えるほど酷かったかな。それとも、もしかして。
(好きって)
いざ言われたら、やっぱり違った……?
「……っ、違うよ……! 」
考えを読まれたのか、慌てるのも実くんの方で。
「引いてなんかない。嬉しいよ。すごい、幸せ、だから」
こつん。
そんな音、ニットを着てる肩で、するはずないのに。
額をぶつけた実くんは、ものすごく痛そう。
「最低な俺でいたくないって。一華さんに、この後少しでも嫌われるなら、早く、早く取り繕いたいって、焦る」
「……ごめんね。私が、気づかなかったふりなんてするから」
何のことだか分からない。
そう言うには私の演技は下手すぎたし、実くんは私よりずっと誠実だった。
「なんで、一華さんが謝るの。ますます、できなくなるじゃん。他の女みたいに、もっと俺の顔見て、騒いで、さっさと好きって言ってくれてたら俺、」
――渇いたり、飢えたりできずに済んだ。
「一華さん。後ろ、向いて」
お互い様じゃないかな。
実くんだって、ただの遊びで、それどころか遊びにすらしてくれず、年上処女をからかってるだけだったら。
「ん……」
ホックを外されるより、留める方が切ないなんて、そんなよく分からないのにひたすら切ない感情、知れないままだったよ。
「見て」
同じ指先で、やや荒くロック解除された画面に表示されているのは。
――『簡単? 年上を落とす方法』