死ぬ前にしたい1のコト
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商品サンプルが大量に入った段ボールを抱え、よいしょとテーブルの上に置いた。
「よ……っと」
そう大して重くはないのに、いつから掛け声なしに作業できなくなっただろう。
箱を開けてみると、これから商品化に向けてのミーティングで使われるアイシャドウのサンプルだ。
プチプラでそのとおり少々チープさがあるけど、そこが可愛いとも言えるデザイン。
数種類のカラーが混ざったラメも、キラキラしてる。
(流行ってそうな色)
まだ少し、手に取ってみたい気分が残ってる。
テスターを使って、店頭に並んだら自分の購買意欲が沸くか、考えてみたい気持ちもやっぱり――ある。
「見た見た。すっっごくびっくり。意外とお盛んだったり? 」
「でも、あんなに若くて可愛い子だよ? 騙されてそうで可哀想なんだけど」
「じゃー、教えてあげなよ」
「無理だよー」
会議室のドアのほんの少しの隙間を縫って、そんな楽しげな声が入り込み、じわりと私を蝕んでいく。
(教えてもらわなくたって、本人がヒモ宣言してるっての!! )
心の中では、ちゃんと言い返せてるのに。
おかしいな。
じわじわ、じわじわ。
瞼が熱くなって、鼻の頭が痛い。
無意識に掴んでいた、きらびやかなラメが私を見て笑ってる。
キラキラ、キラキラ。
こんなふうに、輝けないでしょって。
こんな可愛い色、似合わないよね。
だから――。
(こうしてるの。分かってるよ)
雑用が終日の仕事になって、ルーティンになって、それが何も感じなくなるどころか、楽だなって思うようになって。
そう思うように仕向けたのは自分だけど。
いいかげん、うんざりだって、嘆いたっていいじゃない。