強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 色々と失敗もしてしまったが、依子は許してくれた。

 恋が愛しさに変わるのは、早かった。


 彼女も少なからず俺を思ってくれていることは分かっていたから、俺は心を決める。



 今まで自分のウェヌスを探すために色んな女を抱いたし、それなりの付き合いもしてきた。

 それでも誰もが決定打に欠けていたのは、俺自身が心から好きだと思える相手じゃなかったからだ。

 ずっと共に過ごしたいと思える相手じゃなかったからだ。


 それを依子と過ごした数日間で思い知った。


 これほどまでに共にいたいと思った相手はいなかった。

 共にいられたはずの時間を一緒に過ごせなくなったことが、あれほどまでに寂しいと思ったことはなかった。


 だから決めた。

 彼女を――依子を妻にしようと。



 それでも彼女が俺のことをどれくらい思ってくれているのかが分からなかったため少し躊躇っていたんだ。

 だが、昨夜彼女は俺を受け入れてくれた。

 自分から言い出したはずの約束を反故にしてまで、辛そうな俺を見て「いいよ」と受け入れてくれた。


 しかも……。


『あっケント……好き。んっあなたが、好き』

 昨夜の依子の姿と共に蘇る言葉。

 “好き”だと、言ってくれた。
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