強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 いや、嘘だ。

 そんなこと依子が言うわけない。

 そう信じたい。


「嘘だ、辛い恋なんて……言うわけない」

「ああ、確かに依子は言っていなかったかも」

 その言葉にホッと息をついたのも束の間。

「でも、私が言ったその言葉を否定はしなかったわ」

「っ!」


 まさか、本当に?


 目の前が真っ暗になるというのはこういうことかもしれないと思う。

 信じたくはないのに、事実依子はいなくて……。


 なぜ?
 ついさっきまでは笑顔で一緒にいたのに。

 昨夜はあんなに愛を確かめ合ったはずなのに……。


 絶望にめまいまでしてきた。

「どうして……?」

 俺の呟きに答えるようにカテリーナはいきさつを語りだす。


 依子が俺のことを好きだけれど、自分を選んでもらえるのか自信がないと言っていたこと。

 文化の違いなどで、嫉妬することも多くなりそうだということ。

 カテリーナがそんな依子に、自信がない状態で俺のそばにいて辛くならないのかと確認したこと。


「……そんな……依子」

 俺はあからさまなくらい彼女を好きだと示してきたと思っていた。

 それでも信じてはもらえなかったということなのか?


 絶望が怒りに変わりそうになってきたが、次のカテリーナの言葉で原因が俺にあることに気づいた。
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