強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 予想外のことに戸惑いつつも、聞かれたことだけには答える。

「え? あ、はい」

『チッ仕方ない。少し時間がかかるが、搭乗時間はまだあるだろう? 待っててくれ』

「え? あの――」

 言いたいことだけ言うと、ケントは通話を切ってしまった。


「…………え?」

 えっと……私、言いたいこと言ってないんだけれど……。

 って言うか、今のってどういうこと?


 通話の切れたスマホを見ながら考える。


 待っててくれと言っていた。

 まさか、ここに来ているんだろうか。


 今の言葉を何度思い返してもその答えにしかたどり着かない。

 会うのは無理だろうと思っていたのに、会える。


 すぐに湧いてきた感情は喜び。

 ケントに、また会える。

 そう思うだけで嬉しいという気持ちが抑えられない。


 ああ、私はやっぱりケントが好きだ。
 そう実感する。


 次に思うのは戸惑い。

 でも、どうして追いかけてきたんだろう?

 カテリーナさんはケントにはいつどこで出国するかは伝えないと言っていたのに。


 まあ、ミラノから日本に向かうとなれば選択肢は限られるから予測出来ないわけじゃないけれど……。


 私を連れ戻しに来てくれたんだろうか?

 だとすると嬉しい反面困る。
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