強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 ちゃんとケントの気持ちを聞こうと決意した。

 でも、その答えが私の思いと違うものだったら……。


 ううん。
 もう本当に覚悟を決めよう。

 ケントはまた私を追いかけて来てくれた。

 あんな必死な様子で。


 だったら私も怖いなんて言っていられない。

 逃げるのはもうやめよう。


 ここまで追いかけて来てくれたケントを信じよう。


 一度ついた深い傷は簡単には治ってくれなくて、やっぱり怖さはなくならない。

 でも、ケントと今まで一緒にいて感じた気持ちや与えてくれた思い。

 確かな言葉はなくても、あの思いは本物だと思うから。


 だから逃げずに向き合おう。

 ちゃんと、彼の気持ちを聞こう。


 そう決意した私は、出国審査場の近くに行ってケントが来るのを待った。


***

 搭乗時間もあと少しで三十分を切る。

 それでも来ないケントに不安が頭をもたげた。


 ううん、ケントは来てくれる。

 二十分前までは……いや、十分前までは待とう。


 気は焦るけれど、ギリギリまでは待ちたかった。


 そうしていると、ケントが審査場を通ってこっち側に来るのが見えた。

 普通に通ってくるということは、まさかわざわざチケットを購入して来たってことだろうか。
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