強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
　ああ、でも今はそんなことどうだっていい。

　会えないと思っていた人にまた会えた。


「依子！」
　すぐ私に気づいたケントは走り寄ってくる。

　私も駆け出し、勢いのまま抱き着きそうになって思いとどまった。


　私は彼から逃げたんだ。

　それなのに会えて嬉しいからという理由だけで抱き着くのは卑怯な気がして……。


　でも、私が止まってもケントは止まらなかった。

　勢いのまま抱き着かれ、ギュッとその腕が痛いくらいに締まる。


「依子……良かった、間に合って……」

「……ケント」

　彼の腕の力と同じくらい、胸がギュッと締まって苦しくなる。

　同じようにケントの背に腕を回したかったけれど、少し躊躇って彼の服を掴むのに留めた。


　そのまま、思い切って口を開く。

「ケント、ごめんなさ――」
「すまなかった、依子」

　なのに、私の言葉は最後まで言うことが出来ずケントの謝罪の言葉が重ねられた。


「え？」

　どうしてケントが謝るのか。
　少し驚いていると、彼はそのまま話始める。


「俺は伝えるべきことを怠(おこた)った。何度だって、言える機会はあったはずなのに……」

「ケント？」

「依子、好きだ」

「っ！？」

　望んでいた言葉。
　望み過ぎて、これは幻聴なんじゃないかと思ってしまう。
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