神、恋に落ちる
白羽は組員のジャケットを掴んでいた手を、力なく下ろした。

するとバン━━━!!!とドアが開き、男が逃げるように駆け出してきた。
「え!?今度は、何!?
━━━━━━━!!!?」

白羽はその男の顔を見て、途端に身体をブルブル震わせた。

一瞬で白羽の頭の中が“ある場面”で支配される。

【嫌ぁぁぁぁーーーーー!!!助けて!!やめて!!】
【おい!ちゃんと押さえてろよ!!?】
【はぁーい!脱がしまーす!!】
【つーか、肌綺麗ー!】
【細い身体!あんま抵抗すると、骨折っちゃうよー!!】

白羽はその場で腰を抜かし、ブルブル震えながらその男を見ていた。
あまりの恐怖で、声が出ないのだ。

「白羽!!?」
その白羽の耳に、愛しい声が聞こえてくる。

「み…かど…さ━━━━━」
命が自分の方に駆けつけようとしているところで、白羽は意識を手放した。


「白羽!!?白羽!?」
間一髪で、白羽を抱きとめた命。
跪き、軽く頬を叩きながら名前を呼びかける。

「………なんで?」
「神━━━━━!!!」
組員は、見上げてきた命の表情と雰囲気に言葉が詰まる。
「なぜ、廊下に、白羽がいる?」
凄まじい雰囲気だ。

「白羽さんが便所に行きたいって言って、戻ってる途中だったんです!」
「そう…タイミングわりぃなぁ…
クロを呼んで?」
「はい!」

黒崎が現れて、白羽を託す。
「もう…終わらせるから、車で待っててよ」
「はい、かしこまりました」
白羽を抱えた黒崎が言った。
命は白羽の頭を優しく撫で、額にキスをした。

「すぐ戻るからね」
そう言って、男達に向き直った。

「お前“また”白羽を怖がらせて、そんなに俺を怒らせて楽しい?」
「ち、違っ…!!!」
「ほんっと、命知らずは手がかかる。
地獄を見せる方も、大変だ。
殺った方がはるかに簡単なのに、そのギリギリ前で止めなきゃならない」
ゆっくり、男の方に向かいながら話す命。

「来るな!!」
「だからぁ!!」
「ひっ━━━!!!?」
「この俺に、口答えするな!!」

「うがぁぁーーー!!!!」
「お前のような虫螻は、虫螻らしくおとなしく地獄に落ちろ!!」

< 28 / 100 >

この作品をシェア

pagetop