神、恋に落ちる
帰りの車内。

「んん…」
白羽は目を覚ますと、命に頭を撫でられながら膝枕をされていた。
命の綺麗な顔が、心配そうに見つめている。

「白羽!?良かったぁ…気がついて……」
「命さん…」
ゆっくり起き上がった。
「あ、白羽!起きて大丈夫なの!?
おいで。もう少し寝てなよ!」

「大丈夫です…
あの……命さん。
お話が……」
少し俯き、命の顔色を窺うように話す、白羽。

「え……お話?
…………やだ!!」
急に狼狽えだす、命。

「え……!?命さ━━━━━」
「言っておくけど、別れないから!」
「え?」

「俺はもう…白羽が傍にいないと、死んでしまうんだからね!別れるくらいなら、今すぐにマンションに閉じ込めて監禁するから!
なんなら、今から監禁しようか?
俺しか考えられないように、俺しか頼れないように、狂わせて大切に、大切に囲ってあげる……!」
白羽の頬を両手で包んで、目線を合わせた命。
まるでぶつけるように訴えた。

「命さん!?落ち着いてください!」
白羽は命の手に自分の手を重ねた。
そしてそのまま、手を握った。
「な、何!?」
「別れたいなんて思ってません。
そうじゃなくて!」

「ほんと……?お願い…だから…俺を捨てないで…?俺から放れないで……?」
今度は、すがるような声で呟いて額をくっつけてきた。

「大丈夫ですよ…私の方が……」
「白羽?」
「もっと……」
「しろ…は…?」
無意識に涙が頬を伝っていた。

命が指で白羽の目元の涙を拭って、顔を覗き込む。
「命さん」
「ん?」
「命さんのこと、大好きです」
「うん。嬉しい…」

「だから、もっと…命さんのこと知りたい…!」

「白羽…」
「私は、命さんのこと何も知らない。
命さんが、ほんとはどんな人なのか。
私の知ってる命さんは、お金持ちで、賢くて、カッコいい。それに柔らかくて、優しくて、甘くて……
さっき何をしてたんですか?
組員さんは知ってて、私は知らない!」
今度は、白羽がすがるように命のジャケットを握りしめて訴えた。

「知らない方がいいよ…」
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