神、恋に落ちる
昼食後、再び事務所に戻った二人。

「命さん、コーヒー淹れますね」
白羽が微笑み言う。
そしてキッチンへ向かった。

「あ!白羽」
「え?」
「三人分ね!」
「え?三人……お客様来るんですか?」
「うん。もうすぐ来るよ」
「はい!わかりました!」
命が微笑み言うと、白羽も微笑み大きく頷いた。

「白羽が、よーく知ってる人だよ……」
そして命が笑顔を崩さず呟いた。


「神、来られましたよ」
「ん。通して」
「あ、命さん。
私は、向こうに行ってた方がいいですよね」

「あ!ダメ!離れちゃダメって言ったでしょ?」
「は、はい」
ソファに並んで座る二人。

そこに黒崎が客を連れ、会長室に入ってきた。

「失礼します、神。
では、そちらへどうぞ」
黒崎が命達の向かいのソファに促した。

「失礼します。え………」

「━━━━━━信太くん…!?」

命は白羽を横目で見ながら、含みのある微笑みを浮かべた。
「白羽?どうしたの?」
「へ!?あ、あの…」
「ん?」

白羽は瞬間的に考えを巡らせた。
ここで“元彼”だと言えば、また命を怒らせるのではないか。
できることなら、あんな恐ろしい命を見たくない。

「大学の同級生です」

そこに信太が言葉を発した。
「あ…」
「だよな?羽ちゃん、久しぶり!」
「あ、う、うん…久しぶり……」

「そこ!座って」
白羽の腰を抱いて、足を組んだ命が顎で向かいのソファを差した。

「はい。
で、今日は……」
「ん。クロ、資料」
「はい、こちらです」

「これ……あんた、俺達の商店街まで呑み込む気なのかよ!?」
「そうだよ。だって、お前達の商店街美味しそうだから。
スッゴい繁盛してるんでしょ?
それにお前達も、悪い話じゃないでしょ?」
命の不敵な笑み。

━━━━━━━━━━━━━━━
「信太くん!」
「羽ちゃん…」
「あの、私が命さんに言おうか?
こんなの……買収……」
「いいよ、そんなことしなくて…!大丈夫。
確かに悪い話じゃないから。
ただ………」
「え?」

「一刻も早く……羽ちゃんは離れなよ!」
「え……」

「“神石 命”から」

「なん…で…」

どうして……みんな…………

【白羽ちゃんに、神は相応しくないよ】
【白羽、もし命といることが息苦しくなったら……俺に言え】
直矢と一徹の言葉が、白羽の頭の中を混乱させていた。
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