神、恋に落ちる
「どうして、そんなこと言うの?
それに、どうして“同級生”って言ったの?
私達は、元恋人……」

「神に逆らうな」
「え?」

「神に倫理は通用しない」
「信太くん?」

「神は、本当に“神”」

「え?あの…何言って……」

「俺達みたいな、商店街の小さな店の人間でも知ってる“暗黙のルール”だよ。
神に睨まれたら、呑み込まれて吸収されるんだ。
“神石 命”は本当に“神”だから、誰にも回避不可能だし。
あの人は、どこに行っても“特別”だから。
まぁ、街を仕切ってる人だからな。
あの人を怒らせたら………地獄行きなんだ。
羽ちゃんは、そんな人の女なんだよ!
だから、離れなって言ったの」

確かに命は“かなり”の優遇を受けている。
店に行けば店長はもちろん、もっと上のオーナーが出てきて挨拶される。

命の方がはるかに年下なのにだ。

飲食店でも“待つ”なんて、あり得ない。
どこに行っても、何をしてても、意見なんてされない。
全て受け入れられ、重宝されている。

「もう…遅いよ……」
白羽は小さく呟いた。

「…………それに元恋人何て言ったら、怒らせるんじゃない?」
「え?」
「羽ちゃん、そんな表情(かお)してたよ」
「そ、それは………」

「てか!
言う、言わないじゃなくて!」

「え……?」
「知ってて、俺をここに呼んだんじゃないかな?
俺達の商店街の買収は、ついでだと思うよ」

「そんなこと……」

「そうゆう人なんだよ?」

「………」

「“神石 命”って男は………」

白羽はもう…何も言えなかった。


「それよりも、飲み会来るんでしょ?
今週?来週?
…って、今週だったら明日だけど」
「え?飲み会?あ、その時期だね。
でも、誘われてない……あ!スマホ、壊れちゃったから」

「そうなんだ。またいつものとこみたいだよ?
どうする?俺が桂里奈に言っておこうか?」

「あ……ううん。ごめんね、たぶん行けないから……
じゃあね、信太くん」
白羽は小さく手を振り、会長室に戻ったのだった。
< 54 / 100 >

この作品をシェア

pagetop