神、恋に落ちる
「遅い!!白羽!!
えらく長いトイレタイムだったね!」

「ごめんなさい…」
白羽は命を切なそうに見ていた。

「白羽、おいで?
ギュッてしよ?」

【白羽ちゃんに、神は相応しくないよ】
【白羽、もし命といることが息苦しくなったら……俺に言え】
【羽ちゃんは離れなよ!“神石 命”から】

「白羽!!早く!!」
「命さん」
「ん?」
「……………信太くんは……元恋人です。
大学の時の……」
真っ直ぐ見て白羽は言った。

「は?」
明らかに命の雰囲気が変わり、機嫌が悪くなる。

「初めての恋人で、初めてキスした人で、初めて…抱か━━━━━」

「白羽さん!!それ以上はダメです!!!」
黒崎が慌てて、止めに入る。


「白羽、まさかこの俺を“挑発”してるの?」


命の黒い雰囲気が、会長室を闇に落としたように圧迫していく。


【命には、越えてはならない一定ラインがあるんだ】


怖い━━━━━━
きっと今、一定ラインを越えようとしている。

それでも信太のことは、言わなきゃいけないような気がした。

「大学一年生の時、たった一年間でしたが色んなこと教えてくれた人です」

「白羽、ダメだよ……それ以上は…」
命がゆっくり横に首を振る。

「恋人がいる幸福感、キスの甘さ……」
それでも白羽は、やめない。

「白羽!!ダメ!!」
「白羽さん!!もう…やめてくれ!!本当に神が━━━━」

「でもきっと、知ってたんですよね?
全部…………」

「………」
「信太くんが、元恋人なのも、初めての相手なのも……
命さんは、全て…………」

「フフ……」
突然、命が笑いだした。
「え?」
白羽と黒崎が、命に注目する。

「ほんっと、最高だよ!俺の天使は」

「命…さん…?」
「神?」

「俺の心を奪い、苦しませて、挙げ句の果てに“挑発”する。
“あの”一徹でもできないのに……」
そして自分の髪の毛をクシャッと掴んで、かき上げた。

「白羽」
「はい」

「…………でもね、教えてあげる。
この世の中の人間は、神を“挑発”なんてしちゃダメなんだよ?
それが例え、白羽でも………」
「命さん…」

「さぁ、白羽のその小さな身体と心に刻み込もうね……!」

一定ラインを………越え、た━━━━━━
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