神、恋に落ちる
後日、桂里奈の勤めるカフェに黒崎が来店してきた。

「こんにちは、仲野さん」
「あ、えーと…黒崎さん?」
「神より、お食事会にご招待したいとのことで参りました。来られますか?」

「は━━━━?」

おかしい━━━━━
あんなに嫌悪感を醸し出していた神が、自分を食事に招待するなんてあり得ない。

でもここで断るともっと怖いことが起こる気がして、桂里奈は招待を受け入れたのだった。


あるタワマンの前に、降ろされた桂里奈。
「スゴッ!!」
そしてオートロックを開き、中に入った。

エレベーター内。
「どうして来たんですか?」
黒崎が唐突に言った。

「え?」
「おかしいとは思われないんですか?」
「は?」
「あの神が、貴女を食事に招待なんてあり得ないとは思われないのかと聞いてるんです」
「………」

「……………ほんっと…バカな女…」

「え……?あの……」
黒崎の呟き。
聞き返そうとしたところでエレベーターが着き、扉が開いた。

「どうぞ。
ここを出て、突き当たりです。
では、お楽しみください」
黒崎がエレベーターの扉を開けたまま、頭を下げ言った。
「あの、黒崎さん……」
「お時間が過ぎてます。
早く行かれた方が……」
頭を下げたまま言った、黒崎。
どんな表情かはわからないが、とても恐ろしい。

桂里奈は、ここに来たことを後悔していた。

「やっぱ、私……」

「もう、手遅れですよ」

「━━━━━━━!!!!」
あまりにも、恐ろしい表情(かお)
顔を上げた黒崎の表情が、これから起こる地獄を表しているようだった。

「早く行け!
言ったはずだ!神に、失礼のないようにしろと。
それを聞かず、チャンスを逃したお前が悪い。
全部、お前自身が蒔いた種だ!」

桂里奈はゆっくりエレベーターを出て、突き当たりの部屋に向かった。

インターフォンを鳴らすと“はぁーい”と陽気な声が聞こえドアが開いた。

「君が、桂里奈ちゃん?」
イケメンの男がドアを開け、聞いてきた。
フワッと微笑んでいる男に思わず照れ、顔を赤くする桂里奈。少し安堵していた。

でもこの安堵は、一時のことだとも知らずに………

「は、はい////」
「フフ…どうぞ?」

中に促した。
男は中に入っていく桂里奈の背中を見ながら“地獄へようこそ”と呟いた。
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