神、恋に落ちる
神、執着が加速する
“命さんは、柔らかくて優しくて甘い”
と白羽は言う。
でもそれは……白羽に対して“だけ”


「命さん、ジッと見すぎです…」
「だって、可愛いんだもん!」

後日、外食中の二人。
ゆっくりお酒でも飲もうかということになり、居酒屋にいる。
座敷の個室で、いつものように命の足の間に座っている白羽。

酒に酔いやすい白羽。
一杯飲んだだけで、顔を真っ赤にしている。
そんなほてった白羽をひたすら見つめている、命。

「命さん、もっと飲んでください!
私は、食事しますので!」
「はぁーい!」

そして焼き鳥を食べ出した白羽。
ねぎまをお皿に器用に外し、玉ねぎだけお皿の端に寄せた。
そしてまた鶏肉を串に刺し、食べ始めた。
「………白羽、玉ねぎ食べないの?」
「へ!?た、食べますよ?」

「………」
目を泳がせる白羽をジッと見つめる、命。

「うー」
「嫌いなの?玉ねぎ」
「……はい…」
白羽が目を反らした。

「白羽」
「はい…」
「あーん!」
命が口を大きく開けた。

「え?」
「俺が食べてあげる!
だから、あーん!」
「命さん……はい、あーん」
白羽は箸で摘まんで、命の口に入れた。

「ん。美味しいよ?」
そう言って、微笑む命。
白羽も自然と笑顔になった。


「ふわぁぁぁ~」
しばらくすると、白羽があくびし始めた。
「白羽、眠い?」
「少し…」
「じゃあ…少し寝な?俺に身体を預けて?」
「はい…少しだけ……」
そう言って白羽は、そのまま命の胸にもたれかかり目を瞑った。

すぐに“スースー”と寝息が聞こえ、命は優しく微笑んで白羽の頭を撫でた。

白羽の寝息、命の煙草の煙を吐く音……
個室の中に、心地よい時間が流れていた。


すると突然、バン…!!と襖が開き、中年男性が入ってきた。
「神!!やっと、会えた!」
「………誰だ!?」

「神!申し訳ありません!!勝手に入ってきてしまって!!」
「クロ!今、白羽が寝てるの。
早く“コレ”を外に出して!」
「はい!
おい、早く出ていけ!
今、神は奥様とお食事中だ!」
黒崎が男の腕を引っ張り、個室から出そうとする。

「ちょっと待ってくれ!
神と話を━━━━━━っつ…!!か、神………!!?」

男が固まるのも無理はない。
それ程までに命の雰囲気が真っ黒で、鋭い瞳で睨みつけられていたからだ。
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