神、恋に落ちる
「幸せ~こんな素敵なレストランで食事なんて……」
トイレで由那と二人、話している白羽。
命と一徹は、外に煙草を吸いに出ている。

「そうね。私も一徹に出逢って色んなとこに連れてってもらったなぁ~」
「そっかぁ!命さんや、一徹さんは色んなとこ知ってるんだね!」
「そうね!それに、命さんはどこにでも顔が利くし……ほんと、凄い人よね……!」
「うん…ほんと、私にはもったいない……」

「あ、あんた…神の……」
「え?あ!貴方は……」
それからトイレから出ると、三吉がいた。

「どなた?」
由那が耳打ちしてくる。
「あ…命さんの、お仕事の人…」

「神、いるんですか?」
「え?あ、はい」
「そう」
「あ、あの!あれからお仕事は……」
「倒産したよ…」
「え……!?」
「まぁ、自業自得だがね……今日は、最後の贅沢なんだ……」
「あ、そ、そうなんですね……」
白羽は何と言っていいかわからず俯いた。

「君が、羨ましいよ……
神に愛されてるから、何をしても許される」
「………」

「でもどうやって、取り入ったの?」

「え………!?」
白羽は、弾かれたように顔を上げた。

「だって、君と神は外見がつり合ってないだろ?」
「………」
「身体を、売ったとか?
確か、神にはいるよね?そんな身体だけの女。
その中の一人だったとか?」
「え━━━━何の…話ですか?」
「俺も詳しくは知らないけど━━━━━」

「もう、やめてください!!」
そこに、由那が声を荒らげた。

「え?由那?」
「貴方と命さんに何があるかわかりませんが、お仕事のことなら白羽には関係ないですよね?
それに…何も知らないクセに、身体を売ったとか、取り入ったとか根も葉もないこと言わないでください!
失礼です!」

「は?君にだって、関係ないだろ!?」
「白羽は私の親友です。
その親友が傷つけられているのを、見てられません!
不愉快です!」

「は?不愉快なのは、こっちだ!
君達みたいな、お飾りの女に言われたくない!
神が裏の王だからって、威張りやがって!!」
そう言って、三吉が壁をガン!!と殴った。
その拍子に壁にかけてあった絵画が落ち、あろうことかその下にあった大きな花瓶に当たる。

ガシャーーーン!!と大きな音がして、その破片が白羽と由那まで飛んできた。

「「キャッ!!」」
二人は思わず目を瞑る。

「……ったぃ!!」
そして白羽の脛に花瓶の破片が刺さった。
「白羽!!?」
「痛い……」

「白羽!?大丈夫!?どうしよう…とにかく、命さんを呼ばなきゃ!」
由那はハンカチで白羽の脛を押さえながら、スマホを操作する。
そして命に電話をかけた。

『天使ちゃん?どうしたの?』
「あ!命さん!すぐ、トイレ前に来てください!白羽が!!」
『え!?白羽!?』

すぐに命と一徹が駆けつけてきた。

「白羽!?」
「あ…命さん…」
「どうしたの!?
━━━━━━━!!!?」
命は白羽の切れた脛を見て、一瞬で怒りに震えた。

「この人が、白羽に……」
由那も一徹に抱き締められながら、簡単に説明する。

「三吉、お前……そんなに、地獄落ちてぇの……?」
命の雰囲気が、闇に落ちた。
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