神、恋に落ちる
「神、安居が来ました」
ノックの音と共に、黒崎がドアを開けた。

「ん。白羽、ちょっと下りて?
またすぐギュってするから」
白羽の背中をトントンと優しく叩く。

「………」
「白羽?」
「……ん…」
「え?寝てる?」

「………みたいですね」
黒崎が白羽の顔を覗き込み言った。
「どうすっかなぁ」
「俺がベッドに連れていきましょうか?」
「………やだ!白羽は、俺の!」
そう言って、まるで隠すように更に抱き締める命。

「神、子どもみたいですよ。
心配されなくても、取ったりしません」
「………」
「神?」
「取るなんて思ってない。
でもお前、白羽に惚れてるだろ?」
「は?」
「え?バレてないと思ってたの?」
「あ、いや…」
「ただ…お前は絶対俺から白羽を奪わないから、何も言わないだけ。
とりあえず、このまま連れてく!離れたくねぇし」

命はそのまま白羽を横抱きにして抱えた。
そして安居のいるリビングに向かった。

リビングに行くと、安居がソファの下に正座をして座っていた。
命を認めると、サッと立ち上がり頭を下げた。
「神、お疲れ様です」
「……お前ってほんと、真面目だな!」
白羽を抱いたまま、ソファに座る命。
そして白羽を膝枕して、寝かせた。

「え?」
「痛くね?フローリング」
「でも、ソファに座るわけには……」
「ふーん」
「あ、書類です。
あと、これ…」
「ん?ケーキ?」
「あ、洋菓子です。白羽さんが、食べることが好きって聞いたので……」
「神、タオルケットです。白羽さんに掛けますね」

「………」
「「神?」」
急に命が黙り込み、黒崎と安居が不思議そうに命を見た。

「お前等、気を利かせ過ぎ!」

「「は?」」
「白羽に気を利かせる必要ないだろ?」
「でも、白羽さんがそのままじゃ、風邪ひきますよ?」
と、黒崎。
「たまたま、店の前を通ったので…」
と、安居が言った。

「だからぁ!白羽は、俺のなの!!」
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