君の声色
第1章 光

音のない世界

音のない世界


たとえるなら…水の中。
水の外で誰かが何か言っても聞こえづらい。
わからない。
音が届かない…。
立花陽菜。私は耳がよく聴こえない。


「ねぇ、昨日さ〜」
「マジっ!?」
「やばっ!!チケット当たった!!」
騒いでいたであろうクラスメイトの男子がぶつかってきた。
そのせいで机の上にあったシャーペンが床に落ちてしまった。
「あ…っと、ごめんな…立花さん」
「…」
私は無言で落ちたシャーペンを拾い席に着く。
…無視したわけではない。
「おーい、早坂!」
「立花さん、怒ってるかな?」
「大丈夫だよ、たぶん…」
ただ…聞き取れなかっただけ。
でもいちいち聞き返すのもめんどうだから。
私は人と関わりたくない。
もう…嫌なの。


「きりーつ、れーい」
…もう下校の時間か。
相変わらず今日も暇だった。
音が聴こえないから授業中は暇な時が多い。
長話する先生がいるからだ。
音が聴き取りづらい分、先生達が話している内容がわからない。
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