君に逢える日
「ねえ(もみじ)、今年も行くの?」

 薄暗い道を歩いていたら、(あかり)は私の後ろを小走りでついてきた。その表情はどこか不安げで、私のほうがなにかあったのかと聞きたくなる。

「行くってどこに?」
「あの人間のところ。そろそろあの時期でしょ? 人間が私たちの真似ごとをする時期」

 真似ごととは、面白い言い方をする。たしかに、人間が私たちのような見た目をして出歩いているから、あながち間違っていないのかもしれない。

 でもこの言葉で、燈がなにに対して不安を抱いているのか、なんとなくわかってしまった。あえて、まだ言わないけれど。

「ハロウィンね。行くよ。でもどうして?」
「最近は仮装? する人間が減ったって聞いたから」

 燈の声は小さかった。少しだけ上目遣いで見てくる様は、とても可愛らしい。

 それにしても、やっぱり燈
は私のことを心配してくれていた。行ってほしくないと思っているのだろうけど、そこまで言う勇気はなかったらしい。

「私も聞いたけど……角が残ってても、案外、服さえどうにかすれば、誤魔化せるよ」

 本当は角を隠したかったけど、どれだけ頑張ってもできなかった。

 所詮、なんの力も持たない鬼だ。人間の服を借りることしかできない。

 なんだか人間より劣っているように感じてしまうけど、もう仕方のないことだと思う。
< 1 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop