君に逢える日
◇
「急に声掛けられて逃げた? 椛、何してるの?」
いつもの服に着替えて、住処に戻ったら燈が待ち伏せしていて、今日の出来事を話したら、この反応だ。
私もそう思うから、何も言えない。
「というか、私が一番驚いてるのは、一度も話したことがないってことなんだけど。それ、会ってるって言うの?」
言わない。言っていいわけがない。
もう本当に言い返せないでいたら、燈の大きなため息が聞こえてきた。
「それでよく、私に『好きな人がいると楽しい』的なことが言えたね」
燈は呆れたように言う。
燈の言う通りだ。今思えば、偉そうにしていたことが恥ずかしい。
「でもなんで、話しかけたりしなかったの? 鬼であることを隠して人間に紛れに行くくらいの度胸はあるのに」
ここまではっきりと言われて、さらに言われるかもしれないことを話すのは、なんだか嫌だった。
だけど、燈の真っ直ぐな視線がそれを許してくれなかった。
「……私が人間じゃないって知られると、嫌われると思ったの。私はそれが怖くて、遠くから見てることしかできなかった」
「で、向こうから声をかけられて逃げた、と」
燈が続けた言葉に頷く。
「椛は、逃げたことに対して後悔してるの?」
いつもの服に着替えて、住処に戻ったら燈が待ち伏せしていて、今日の出来事を話したら、この反応だ。
私もそう思うから、何も言えない。
「というか、私が一番驚いてるのは、一度も話したことがないってことなんだけど。それ、会ってるって言うの?」
言わない。言っていいわけがない。
もう本当に言い返せないでいたら、燈の大きなため息が聞こえてきた。
「それでよく、私に『好きな人がいると楽しい』的なことが言えたね」
燈は呆れたように言う。
燈の言う通りだ。今思えば、偉そうにしていたことが恥ずかしい。
「でもなんで、話しかけたりしなかったの? 鬼であることを隠して人間に紛れに行くくらいの度胸はあるのに」
ここまではっきりと言われて、さらに言われるかもしれないことを話すのは、なんだか嫌だった。
だけど、燈の真っ直ぐな視線がそれを許してくれなかった。
「……私が人間じゃないって知られると、嫌われると思ったの。私はそれが怖くて、遠くから見てることしかできなかった」
「で、向こうから声をかけられて逃げた、と」
燈が続けた言葉に頷く。
「椛は、逃げたことに対して後悔してるの?」