【完】震える鼓動はキミの指先に…。
守り続けたい距離感 Side:翔太
気付いたら、体が勝手に動いてた。
他の誰かが触れるよりも先に、机から倒れ込むあやっちを抱き上げて、ぴっちりと閉められていた教室の扉を、半ば蹴り上げるようにして抉じ開けてから保健室へと走り込んだ。
ガラガラガラッ
「…っは。笹岡せんせ、いるっ?!」
しっかりとあやっちをお姫様だっこしたまま、保険医の先生を呼ぶと、何かを記入していた笹岡先生が驚いたようにこっちを見る。
「ちょっと!保健室には静かに入りなさいって…あら?成宮くん、志田さんどうかしたの?」
「なんか、胃の辺りずっと押さえてて、そしたら急に倒れちゃってっ!」
オレは突然のことにオロオロするばかり。
だって、あやっちが最近調子悪そうにしてたの知ってたから…。
でも、オレが「大丈夫?」なんて聞けば聞くほど、あやっちを追い詰めてしまう気がして、それを考えたら「無理しないでよ」としか言えなくて。
こんなんだったら、もっとちゃんとあやっちの愚痴とか聞かせてもらって、気持ちの整理をさせてあげれば良かったと、そう後悔した。
「ね、笹岡せんせ?あやっち、大丈夫?」
そう聞けば、先生はそっとあやっちの額に手をやった。
「そうねぇー…熱はないみたいだから、多分寝不足と過労から来るものかしら。とりあえず、ベッドに横にさせてあげて?いつまでも君が抱っこしてたら、治るものも治らないわよ?」
「…あ」
先生にそう言われるまで、あやっちをお姫様だっこしていたことを忘れていて、顔を赤くしながらも、オレはそっとベッドにあやっちを下ろした。
「んー…悪いんだけどね?私次の時間会議あるのよ。君はもう帰りでしょ?だったら、彼女が目を覚めますまで、隣にいてあげて。…あ、オオカミさんにはならないように!」
ぱちん、
そうウィンク付きでそう言われて、滅茶苦茶動揺してしまう。
「んなっ?!そんなことしないし!」
「ふふふ。うーそ。君なら大丈夫ね。じゃ、後は宜しく〜」
すっかり、キャラ崩れのオレ。
いつもなら、どうでもいいことにバカみたいに反応して、いつもとは全く違った行動を取っている。
傍らには、すぅーすぅーと規則正しい寝息を立てているあやっち。
その顔を見て、眉間にシワが寄ってしまう。
「こんなに、隈作るまで…なんでそんなに頑張っちゃうの…?」
すとん
静かに近くにあった椅子を引き寄せ腰掛ける。
あやっちは、何でもかんでも一人で背負い込み過ぎだよ…。
そう、面と向かって言えないオレ。
なんか、滅茶苦茶情けない。
好きな子を、守りたいと思う気持ちはきっと…誰しもが感じているんだろうけど。
オレの場合、完全なる片想いだから。
それを、覆すことはまだ出来ないから。
「あやっち、これからはオレに打ち明けてよ。どんな小さいことでもいいから…」
そう呟いて、細い指に自分の手を添えた。