【完】震える鼓動はキミの指先に…。
優しくて綺麗なキミ Side:翔太
揺れている瞳を、見るのは一体何度目だろう?
あやっちの泣き顔を見たら、居ても立ってもいられず、手を引いてあの場から…石井ちゃんが見えてる場から、あやっちのことを連れ出したかったんだ。
だって、好きな子を守りたい。
そんな切実な気持ちは初めてで、とにかくアンテナが忙しく動いてて、早く笑顔になって欲しいって、少しでも気を取り直して欲しいって、そう思うじゃないか。
何時もは、負けん気が強くて泣きそうもないって思わせるような態度を取るあやっち。
でもそれは、本当のあやっちじゃなくて…。
いつだって心が悲鳴を上げている。
そう、思うんだ。
石井ちゃんを見つめてるあやっちの視線は、何処までも柔らかくて、でも切なくて…。
そこに、もしも…つけ込めるとしたら、どれだけいいんだろう?
そんなことを思っていたら、ふと口から出てしまった、言葉。
真っ直ぐに、あやっちの前に出してしまった言葉。
「好き」
あんな状態で告白するなんて、ずるいって分かってたのに、どうしても…想いが止めらなくて、口にしてしまった言葉。
案の定、あやっちはびっくりしたような顔してた。
初めて二人で帰った日、カフェでくるくる変わるあやっちの表情に、その想いはどんどん大きくなっていって、何時かは言ってしまうだろうとは思ってたけど…まさかあのタイミングで、なんて。
だから、慌てて返事は急がないとか色々と後付けて、自分の気持ちにストップを掛けた。
でも、あやっちはそれを拒絶するわけでもなく、ただちょっと照れ臭そうに、ありがとうと流してくれた。
…多分、あやっちのことだから、俺を傷付けない為に。
そんな思い上がりもいいとこの、思考回路。
だって、そうでも思わなきゃやってけなくて…。
思いが競って焼き切れそうなのを、必死で堪えている状況。
ウソつきなキミ。
何処までも自分の気持ちを隠して、泣くことを我慢して…それから悲しみに一人暮れてる。
オレに、一体何が出来るんだろう?
そう考えれば考えるほど、ぎゅーっと胸の辺りが苦しくて、恋するっていうのはこういうことなんだって自覚していく。
別に誰かと付き合うことは初めてなんかじゃない。
だけど、あやっちを想う気持ちは全てがオレとしては初体験で…。
さっき掴んだ華奢な手首を思い出しては、柄にもなくドキドキと気持ちが忙しなく動いた。