【完】震える鼓動はキミの指先に…。
そして、迎えた帰り道…。
「ねぇ?翔太には、羞恥心とかそういうの、ないの?」
「え?なんで?」
いや、そこでなんで?と返されましても…。
「いや…だからさ、こう…」
と、説明しようとする私の方が恥ずかしくなって、下を向いてしまう。
なんでかというと、今のこの状態がそうさせる。
そう、私と翔太は現在、放課後…というか翔太の部活終わり、学校から少しだけ遠くの繁華街の、雑貨屋さんで小桜あげるプレゼント選びをしているわけなのだけれども…。
ふと、私が小さな万華鏡の付いたネックレスを見付けて、そのあまりの綺麗さに少し離れた所にいた翔太を呼んで、
「中覗いてみて!」
と言った…までは良かったんだけど。
た、し、か、に!
「覗いてみて」
とは言ったけど!
…何も、私の手の中にあるネックレスをそのまま覗き込んで、
「うん、かわいい。綺麗だね」
なんて…言う?!
といった最中なのだ。
「だからって、自分で持つか他のやつ手に取って見ればいいじゃない…っ」
「あやっちのやつが見たかったし、オレ、今両手この通りだし?」
「…あ。ご、ごめん!」
そうだった。
このお店に入る前、ゲームセンターの前を通った時、私の好きなくまさんキャラのぬいぐるみがクレーンゲームの中にあって、それを翔太がいくつかほいほいっといとも簡単に取ってくれて…それを全部持っててもらったんだったっけ。
「いいよいいよ〜。それよりさ、神谷へのプレゼントはそれで決まり?…オソロとかにはしないの?」
「んーー……どうしよっかな……」
小桜とのお揃いを提案してくれた翔太に、困った顔をして段々声が小さくなる私。
そんな私に、翔太がこう言ってきた。
「じゃ、オレとのお揃いは?」
「…へ?」
「これこれ」
ちょんちょん
そうやって指を向けたのは、
「キーホルダー…?」
「そ。かわいくない?ふくろうさんだって。これならさ小さいし、ぱっと見オソロに見えないし…折角だから…しない?」
「ん。いいよ。分かった」
「ほんと?!わー…良かったぁ…これでヤダとか言われたら、オレへこんで戻ってこれなかったよ〜」
なんとなくの流れで、承諾してしまったけれど、これで良かったのかな?と反省する。
でも、にっこり笑って、
「どのふくろうさんがいい?」
なんて聞いてくる翔太に今更いらないなんて言えるはずもなく…。
トレイにあった10程度キーホルダーの内の、翼が赤いやつを指差すと、翔太はそのまま、
「おっけぃ〜」
と言って、さっさと会計へと向かってしまった。