【完】震える鼓動はキミの指先に…。
伝えたいメッセージ Side:翔太
相手にされなくてもいいと思ってたけど、無理だった。
あやっちを泣かせたくない。
あやっちを笑顔にさせたい。
誰よりあやっちを幸せにしたい…。
そういう気持ちは日を追うごとに、大きく膨らんでいって、苦しくなるくらいだった。
だから、石井ちゃんから守るようにして、この所やってきたんだけど…。
あのふくろうさんを一緒に買った日から、どうもあやっちの態度が違っていて。
最初はオレの思い過ごしかとも思ったけど、よくよく観察していると、未来にも神谷にも素っ気なく…石井ちゃん関しては、ほぼスルー。
それでも、オレに対しては変わらずで…。
あんなに強く石井ちゃんのことを想っていたはずなのに…どうしたんだろう?
もしかして、何かあったのかな。
苦しさを一人で抱えてるのかな。
もしも、苦しい想いを少しでもしているのなら…オレが癒やしてあげたい。
そう思うのに、何をしたらいいのか本当に方法が分からない。
一か八かで、オレの高校生活最後の試合を見に来て欲しいと…わらをもすがる思いで言ってみたら、なんの戸惑いもなくOKサインが出て…。
あまりにも嬉し過ぎて、顔を崩して笑ったらあやっちが肩を震わせて少し緊張しながら、何かを言う。
なんて言ったの?
そう思うほどの小さな声。
「んん?」
でも、その姿が可愛くて、知らず知らずの内に近寄った距離。
あやっちは、そんなオレに早口でこう言った。
「お弁当のおかず!何がいい?!」
俺にとってそれは、まさしくアイの爆弾投下。
恥ずかしさのあまり慌てて、投下してきた言葉をナシにしようとするから、オレは被し気味に、小さく叫ぶ。
「甘い卵焼きとタコさんウィンナーはマスト!でも、あやっちが作ってくれるお弁当ならなんでもいい〜」
多分、今の俺の顔ヤバイことになってると思うんだ。
ニヤける口元を無理やり教え込んで、ごくり、と喉を鳴らず。
や、別に何かエロいことが目の前で繰り広げられているわけじゃないんだけども、しゅー…と頭のてっぺんまで、耳の後ろまで、真っ赤にしているあやっちを見たら…どうにもこうにも自分の中のドキドキする気持ちが溢れて行って…。
やば、い。
めっちゃ嬉しい。
え、なに、あやっち…可愛いンですけども!!
や!
あやっちの可愛さは前からなんだけど!
なんだろ…この可愛さは、他の誰にでもないオレにだけ向けられたものだって、そう思ってしまうくらいの破壊力で…緩んだ口元が全然元に戻らなかった。