【完】震える鼓動はキミの指先に…。
そんなこんなの、ふとした時に溜息を吐いてしまうことの繰り返しな、部活帰り。
見付けてしまった、んだ。
あやっちの頭を軽く撫でてから、ひらひらと手を振って背中を向けた石井ちゃんのことを、泣きそうな顔で見つめ続けていた姿を。
制服のスカートがあやっちの掴んだ強い力で、くしゃりと捻れていたのを。
あー…そっか。
あやっち、石井ちゃんのこと好きなんだ。
まるで難解かと思われたパスワードがかちり、とハマった瞬間。
そして、その時オレの心の中も確信付いた。
オレ、もしかしなくても、あやっちのことが好きなんだ。
そう思ったら、急に恥ずかしくなって、かぁーっと頬が赤くなる。
そして、そんな時に限って、人のことを揶揄うのが大好きな隆史に背中をつんつんとされる。
そして、すぐさま顔をひょいと覗き込まれて、吹き出された。
「ぶっ!しょーた!…え?お前さん何一人百面相してんの?おーい、え…?やっぱりそれって恋?!」
「…っ、るせーよ」
「やーん。しょーたくんがこわーい」
くねくねと体を横に動かして、大袈裟に隆史が言うと、近くにやってきたメンバー達が、
「まぁーた、出たよ。この漫才コンビ!」
とゲラゲラ笑う。
外野は笑いたきゃ好きなだけ勝手に笑えばいい。
今のオレは、それどころじゃないんだから…。
石井ちゃんは、神谷をこよなく可愛がってるから、そういうのももしかしたら関係してるのかもしれない。
じゃなきゃ、あんなに悲しそうな顔をしたりするもんか。
オレが何をどう出来るかなんて、そんなことは分からないけれども。
どうかあやっちが、これから悲しんだり泣いたりしないといいな…。
見つめることしか出来ないけれど、オレはそう思った。