クラスの男子が全員、元カレだった件
「あの、高橋さん!」と春乃ちゃんが顔を赤らめながら言った。
「その、高橋さんは、好きな人とか付き合っている人とかいるんですか?」
ストレートど真ん中の質問だ。春乃ちゃんのような子が意外と積極的なのかもしれない。
「まあ、いるけど?」
バシッ! ストライク! と私の心の中で、構えたグラブにボールが収まる音が聞こえた。
「それは好きな人ですか? 付き合っている人ですか?」
「好きな人……かな」
「そうですか。では次の質問です。高橋さんは明日は何してますか?」
「ここで当枝の勉強会の予定だけど」
「それを教えるのは、夜、春乃がでもいいですか?」
「お前って、勉強……」
「お兄ちゃんほどじゃないですけど、一応3-Aです。文芸の特進クラスなので、大体のことは教えられると思います」
「そりゃすごいな。まあ、それでも別にいいけど」
キャッチボールがテンポよく進んでいく。それを私は後ろから見て、「ストライク!」って言うだけの審判。
そうか。私と高橋隆人はキャッチボールじゃなくてドッヂボールだったんだ。ずっとそうだった。ちゃんとしたキャッチボールはできていなくて、分かり合えなくて。
私だってしたかった。高橋隆人とキャッチボールを。シーザーサラダのドレッシングを食べてようと、そこをバカにして陰で笑っているんじゃなくて、もっと早く、ちゃんと言えばよかったんだ。