クラスの男子が全員、元カレだった件
27、元カレと映画を観た件
クレープを食べ終えて、坂井海が「そろそろ帰るか?」と聞いた。
私は別にこのままここで少し遊んでいきたい気分だったけど、帰ると言われて、じゃあ、一人で……というのもなんだか惨めに感じて、帰ることにした。
デパートのエスカレーターを降りるときって、なんか切ない。
階段が下に下に下がるのに比例して、気分までずんずんと下に、下に下がっていく気がする。
3階から2階のエスカレーターを降りている時、ふと横を見ると、2階から3階へ上がる、知り合いがいた。
あれは、高橋隆人だ。
「あれ、高橋じゃん」
坂井海も気づいて、声をかけると、高橋隆人も「おっ!」とした表情でこっちを見ていた。
「もう一回、上、上がってみようか」
そう坂井海に言われ、私たちはまた2階から3階へ、高橋隆人の元へ行こうとした。
すると、今度は同じタイミングで、高橋隆人が3階から2階へ降りていて、私たちは交差するみたいな形になった。
うわっ、すれ違い。
こういうの、電話とかでよくある。かけて、繋がらなくて、もう一度かけ直すか、向こうからかかってくるのを待つかで悩んだ末、もう一度かけてみようとかけてみたら、向こうも同じように自分にかけてきていた結果、お互い話し中になって。
で、今度は向こうからかかってくるのを待っていたら、向こうも同じことを考えていたりなんかして。
まさにこのタイミングが難しい。
「どうする? もう一度降りてみようか」
と坂井海が提案した。しかし、私は「いや」と手で制した。
「あいつのことだから、多分同じこと考えていると思う」
伊達にあいつの元カノをやっていない。わかるのだ。高橋隆人はそういう奴だ。