私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
通学路。



私はまーくんにつられて、空を見上げた。

見渡す限りの青。どこまでいっても空は青い。

と思いきや、ぽつぽつと小さな雲が視界に飛び込んでくる。



「メロンパン」

まーくんが丸くて厚みのある雲に指を差していった。


「ドーナツ」

私も真ん中に穴の開いた雲を見つけ、すかさず言った。



「デニッシュ」

「えんぴつ」

「アフリカ大陸」

「ペンギン」

......。

......。



私とまーくんの間に、色んな名詞が飛び交っている。

それを横で聞かされていたみーくんは、肩をすくめていた。




「お前ら、なにワケわからん事いってんだよ。宇宙人と交信でもしてんのか」



みーくんは、私たちが雲の形を別のものに見立てる遊びをしていると理解できないらしい。


「そばにいるのが恥ずかしいからやめてくれ」

「だって......」

「だってじゃねーよ。マジで恥ずかしいんだからな」




だって仕方ないじゃん。

この地獄の坂道を前にして、何か遊びながらじゃないと気が遠くなりそうなんだから......。



通学路、最大の関門ともいえる坂道。

『地獄の坂道』とも言われているこの坂は、うちの学生を大いに苦しめている。

この坂のせいで、過去に登校拒否になったり、中退してしまう人もいたと噂があるくらい、うちの学生にストレスを与えている。

今まさに、体感45度くらいあるこの坂は、私の足首を痛めつけてきた。



「なんで高台に学校なんて作るかな......」

私は愚痴をこぼしながら歩く。



それを聞いたまーくんが何かを思い出したように、話題を振ってくる。

「ねえねえ、そういえばさ、1年時の生徒会選挙で『地獄の坂道を撤去します』と公約を掲げた人当選してたよね」

「あのピエロだな」

みーくんはすかさず答えた。




そういえば、そんなこともあったっけか。

もうあれから1年もこの学校に通っていたんだ......

そう、しみじみ感じた。




「結局、地獄の坂道撤去してくれなかったよね」

「普通に考えて無理だと分かるだろ」

「ほら、なんかあの人ならしてくれそうって思っちゃって、僕投票しちゃったんだよね」

「お前は物事を考えなさすぎんだよ」

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