私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
校門を駆け抜けると同時に予鈴がなり、門扉が閉められた。

地獄の坂道を上りきり、無事に遅刻せず登校できたことに安堵する。


「はあ......心臓に悪いよ。明日から余裕もって家をでようね」


私はみーくんにそう言った。





「俺朝弱いから無理」

「そ、そんな......」



明日から1週間、こんな遅刻ギリギリのスリルを味わわなければいけないのか......。

そんな絶望感に私は肩を落とす。






昇降口。靴箱のロッカーでよく知った顔に話しかけられた。


「おはよう、ねここ」

「おはよう、弥生(やよい)ちゃん」



弥生ちゃんは、気が強いと言わんばかりの鋭い目におさげが特徴の女の子だ。

第一印象怖いと思われがちだが、私によく気をかけてくれるいい子だ。



「もしかして、あのバカ二人に付き合わされた?」

「あはは......」



弥生ちゃんの本名は、鮎川弥生(あゆかわやよい)

みーくんたちほどじゃないけど、小学生の時からの友達で、幼馴染ともいえる。

だから、弥生ちゃんも、みーくんやまーくんのことをよく知っている。



靴箱から出てきたみーくんは、弥生ちゃんを見つけるに、怯えた顔をして背を向けた。

弥生ちゃんは、そんなみーくんに睨みつけるような笑みを浮かべて話しかける。




「やあ、磨手」


「あ、鮎川さん......。な、何?」



みーくんはギクシャクしていた。

みーくんは弥生ちゃんが怖いのだ。

それは小学生の頃に勝気な弥生ちゃんに支配されていた名残だけれど。




弥生ちゃんはそんなみーくんを見てため息を一つ。


「またね、ねここ」



そう言って、いなくなってしまった。



去り際の弥生ちゃんはみーくんに怯えられていて、悲しげに見えた。

別に今日に始まったことじゃないけど......。




私は弥生ちゃんとみーくんの間に、過去何があったのか知っている。

私がしてあげられなかったことを、弥生ちゃんはみーくんにしてあげた。

そして、みーくんは本当のことを忘れることができ、弥生ちゃんに支配されていた過去のみ残った。

その結果、弥生ちゃんはみーくんに嫌われることになってしまったけれど。





これは、私と弥生ちゃんだけの、秘密なのだ。

決して、みーくんには言えない、そんな女の子同士の秘密なのだ。





もし、この世界がギャルゲーだとして、みーくんが弥生ちゃんを攻略したとしたら、そのときにこのことが語られるかもしれない。


なーんて、ね。


でも、それは”私の口から語られることはない”とだけ、明確にしておきたい。


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