私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
四限目が終わり、周りはすっかり昼食モードになっていた。
学食組はそそくさといなくなり、弁当組は三々五々に散ってその包みを広げようとしている。
さて、私もお昼にしようか。
私はフックにかけたカバンから、巨大な風呂敷包みを取り出し、机に置く。
ドスンッ。
そう、”私たち”のお弁当だ。
私が早起きして作ってたものの正体である。
ただ周りのクラスメイトにはそのことが分からないので、私が一人でこの重箱を食べると思われてしまったようだ。
チラッ、チラッ、と二度見をしてくる。
もう、そこまで食い意地張ってませんーーー!!
言われたわけじゃないので、被害妄想だけど。
それを見たみーくんは、小銭をポケットに入れて、逃げようとする。
勿論、そんなことさせない。捕縛。
「離せ、葵」
「みーくん、一緒に食べましょ~~」
「よせえええええ」
みーくんは、突然、なぜか俯いてしまう。
嫌がるわりに、みーくんは抵抗しない。
もし本気で抵抗されたら、私じゃ叶わないし。
だからみーくんが大人しいうちに、私はみーくんの袖を引っ張り、教室を飛び出した。
「あとは、まーくんだね」
まーくんとはクラスが別だ。
双子はクラスが分けられる運命にあるようで、二年のクラス替えは、私とみーくんがAクラス、弥生ちゃんとまーくんがBクラスとなった。
Bクラスの前まで来たが、まだ授業が終わっていないようだった。
「うわ、竹谷だぜ。磨雄も災難だな。」
みーくんが言った竹谷というのは、必ず始まりのチャイム5分前に授業を始め、終わりのチャイム5分後に授業を終える英語教師だ。
竹谷は常に「Time is money」と口癖のようにいうけど、それは教訓ではなく、押し付けで、「みんなの時間は俺の時間、みんなの金は俺の金」と翻訳できるんじゃないかと思えるくらい自分勝手だ。
だから、ほとんどの生徒は、竹谷のことが嫌いなのだ。
......。
......。
待ち時間、無言が続く。
手持無沙汰を感じ始めた頃、みーくんが沈黙を破る。
「なあ、葵、ちょっといいか」
みーくんが冷たい口調で言い放つ。
「お前さ、学校で「みーくん」っていうのやめろよ」
心に何か尖ったものが刺さった。
二人の距離が、さらに遠くなる。
いつか言われると思っていたこと。
「葵」と呼ばれたあの日から、いつかは絶対に言われると思っていたこと。
だんだん、幼馴染ですらいられなくなる不安。
三人一緒に洞窟に入ったのに、まーくん一人だけ枝分かれの道に入っていっき、松明が一本減ってしまう恐怖に似ている。
柱三本あってようやく支えられている建造物の柱の一本を、のこぎりで切れ目を入れられた時のような、そんな最悪の予感が私の中を駆け巡る。
これ以上は、取り返しがつかなくなってしまう。
もう、これ以上距離を離さないで。
もう、これ以上傷つけないで。
「どうして?」
そんな理由聞きたくない。
それでも恐る恐る聞いてしまった。
もしかすると、ここで失恋してしまうかもしれないのに......
「お前に俺ら以外の男が近づきにくいだろ」
みーくんはちょっとらしくないことを言ったという感じで俯いて答えた。
私はその答えに呆気にとられる。
私、その流れで振られると思った。
てっきり、みーくんに好きな人がいて、馴れ馴れしくしている私が邪魔だからそう言ったんだと思った。
「私? どうして?」
「お前に好意があるやつがいたとしたら、アンフェアだろうが」
「あんふぇあ?」
「ああ、調子狂った。やっぱ今のはなし。そういやお前モテねえから関係ねえんだったわ」
みーくんは罰が悪そうにあたふたする。
「ちょっと、それ聞き捨てならない」
みーくんをポカポカと叩いてるうちにBクラスから竹谷が出てきて、続くように二つの出口から生徒があふれ出てくる。
私はその雑踏の中にいたまーくんを呼んだ。
学食組はそそくさといなくなり、弁当組は三々五々に散ってその包みを広げようとしている。
さて、私もお昼にしようか。
私はフックにかけたカバンから、巨大な風呂敷包みを取り出し、机に置く。
ドスンッ。
そう、”私たち”のお弁当だ。
私が早起きして作ってたものの正体である。
ただ周りのクラスメイトにはそのことが分からないので、私が一人でこの重箱を食べると思われてしまったようだ。
チラッ、チラッ、と二度見をしてくる。
もう、そこまで食い意地張ってませんーーー!!
言われたわけじゃないので、被害妄想だけど。
それを見たみーくんは、小銭をポケットに入れて、逃げようとする。
勿論、そんなことさせない。捕縛。
「離せ、葵」
「みーくん、一緒に食べましょ~~」
「よせえええええ」
みーくんは、突然、なぜか俯いてしまう。
嫌がるわりに、みーくんは抵抗しない。
もし本気で抵抗されたら、私じゃ叶わないし。
だからみーくんが大人しいうちに、私はみーくんの袖を引っ張り、教室を飛び出した。
「あとは、まーくんだね」
まーくんとはクラスが別だ。
双子はクラスが分けられる運命にあるようで、二年のクラス替えは、私とみーくんがAクラス、弥生ちゃんとまーくんがBクラスとなった。
Bクラスの前まで来たが、まだ授業が終わっていないようだった。
「うわ、竹谷だぜ。磨雄も災難だな。」
みーくんが言った竹谷というのは、必ず始まりのチャイム5分前に授業を始め、終わりのチャイム5分後に授業を終える英語教師だ。
竹谷は常に「Time is money」と口癖のようにいうけど、それは教訓ではなく、押し付けで、「みんなの時間は俺の時間、みんなの金は俺の金」と翻訳できるんじゃないかと思えるくらい自分勝手だ。
だから、ほとんどの生徒は、竹谷のことが嫌いなのだ。
......。
......。
待ち時間、無言が続く。
手持無沙汰を感じ始めた頃、みーくんが沈黙を破る。
「なあ、葵、ちょっといいか」
みーくんが冷たい口調で言い放つ。
「お前さ、学校で「みーくん」っていうのやめろよ」
心に何か尖ったものが刺さった。
二人の距離が、さらに遠くなる。
いつか言われると思っていたこと。
「葵」と呼ばれたあの日から、いつかは絶対に言われると思っていたこと。
だんだん、幼馴染ですらいられなくなる不安。
三人一緒に洞窟に入ったのに、まーくん一人だけ枝分かれの道に入っていっき、松明が一本減ってしまう恐怖に似ている。
柱三本あってようやく支えられている建造物の柱の一本を、のこぎりで切れ目を入れられた時のような、そんな最悪の予感が私の中を駆け巡る。
これ以上は、取り返しがつかなくなってしまう。
もう、これ以上距離を離さないで。
もう、これ以上傷つけないで。
「どうして?」
そんな理由聞きたくない。
それでも恐る恐る聞いてしまった。
もしかすると、ここで失恋してしまうかもしれないのに......
「お前に俺ら以外の男が近づきにくいだろ」
みーくんはちょっとらしくないことを言ったという感じで俯いて答えた。
私はその答えに呆気にとられる。
私、その流れで振られると思った。
てっきり、みーくんに好きな人がいて、馴れ馴れしくしている私が邪魔だからそう言ったんだと思った。
「私? どうして?」
「お前に好意があるやつがいたとしたら、アンフェアだろうが」
「あんふぇあ?」
「ああ、調子狂った。やっぱ今のはなし。そういやお前モテねえから関係ねえんだったわ」
みーくんは罰が悪そうにあたふたする。
「ちょっと、それ聞き捨てならない」
みーくんをポカポカと叩いてるうちにBクラスから竹谷が出てきて、続くように二つの出口から生徒があふれ出てくる。
私はその雑踏の中にいたまーくんを呼んだ。