私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
高校生男子は食べ盛り。
そして、季節も食べることにおあつらえ向きな秋。
私が風呂敷包みを解くと、巨大な塔のような弁当が姿をみせる。
「おいおい、重箱かよ」
みーくんは、呆れたように肩をすくめた。
一方でまーくんは、誕生日プレゼントで欲しいものを貰った子供のようにはしゃいでいた。
「兄貴、おせちだよ。お・せ・ち。美味しそうだね」
「馬鹿、おせちじゃねえよ。匂いでわかれ」
まーくんはみーくんに突っ込まれ、首をかしげる。
「そうなの? ねここちゃん」
「うん、そんな凝ったものは入れてないよ。でもまーくんが好きなのいっぱいいれたからね」
「やったーーーー」
まーくんは諸手を上げくるくる歓喜の舞。
うれしいけど、いちいち大げさ。
みーくんはそんなまーくんをみてやれやれと言った感じでため息をついた。
私はお待ちかね―という感じに、重箱をバラしていく。
次々に姿を現すミートボール、卵焼き、ハンバーグ、鮭の切り身、白身フライ......
色んなもの食べてもらいたいなって色とりどり詰めた。
食べ盛りの男子に食事を作ると決めた以上、日頃作るものよりも気合が入ってしまったのもある。
頑張ったし、褒めてほめて~~。
「わー、すごくきれいだね。いただきまーす」
まーくんは真っ先に私が言ってほしい言葉を言ってくれた。
そういってすぐ、待ちきれないと言わんばかりに割り箸を割り、口に放り込む。
「んんーーー! おいしい!」
「ありがとう、まーくん」
そう、まーくん。そう言ってもらえると嬉しい。
「口に合わなかったらどうしよう」とか、「食べてもらえなかったらどうしよう」とか、そういった不安を踏み越えて、「作ってよかったー」という感情が込み上げる。
一方でみーくんは厳しい。
「和、洋、中、適当だな」
「お弁当にそんな節操求めちゃだめだよ」
「食い合わせとかあるだろ」
「だいじょうぶだよう」
みーくんはやっぱり褒めてくれないよね。
いや、弁当に節操なしというのはある意味誉め言葉では?
なんやかんや、食べてるし、合格ラインは達したかな。
「兄貴、そのエビフライ食べないの? 貰うね」
「あ、おい......」
まーくんはみーくんの皿から最後のエビフライを奪った。
みーくんは握りこぶしを作りながら、プルプル震えている。
あ、これは怒ってるね。
「それは最後に食べようと取っておいたんだよ」
「てっきり嫌いなものかと」
「嫌いだったら自分の皿に乗せねえよ」
あれ、それって、よく考えたら、私の作ったエビフライが好きってことじゃ。
私は恐る恐る疑問をぶつけてみる。
「エビフライ好きなのかな?」
みーくんはバツが悪そうに黙り込む。
言葉を選んでるのかな?
そして、みーくんは俯く。
「好きじゃねえよ」
まーくんはみーくんの肩をポンと叩き
「素直じゃないねえ」
と揶揄うようにみーくんに言った。
そこからほとんどまーくんと私だけが話していた。
予鈴がなり、散り散りになっていた学生が昇降口に吸い込まれ、黒山の人だかりを作っている。
私たちもそろそろ片づけて教室に戻らないと。
重箱の中を確認すると、まだ半分以上おかずが残っていた。
「量多くね」
「そうだね。半分でよかったね」
「いや、その半分でもいいだろ」
食欲の秋と食べ盛りの相互作用で、これくらい必要だと思ったんだけどなぁ。
食べ盛りの男子って難しい。
私は重箱を重ね、みーくんたちを払い、レジャーシートを畳み始める。
その作業を横でみていたまーくんは私に話しかけてくる。
「ねここちゃん、明日も作ってよ」
「うん、いいよ。何か食べたいものある?」
「えっとね、明日はエビチリが食べたいな」
「うん了解。エビチリ作っておくね」
「あ、できるだけ辛めがいい!」
「辛めにしとくね」
「ありがとう」
まーくんはリクエストを済ませると、「また後で」と一人昇降口に消えてしまった。
「はぁ」
まーくんが見えなくなると、ため息をする。
みーくんも、まーくんみたいに好きな食べ物をリクエストしたり、遠慮せずに話してくれたらいいのにな......。
まーくんとみーくんって同じ双子でも全然違うんだよね。
そういえば、みーくんはどこにいったんだろう......。
見回すと、すぐに発見する。
食堂の自販機から戻ってくる最中だったようだ。
みーくんは二本ジュース持っていたジュースの一本を私に投げた。
これは、やるってことだろうか?
間違ってたら恥ずかしいけど、ありがとうと言っておく。
「ありがとう」
すると、みーくんは右手を上げた。
そして、みーくんは突拍子もないことを言い出す。
「お前と磨雄って傍目からみて老夫婦みたいだな」
「えっ?」
私は戸惑う。
そういわれたこと自体は初めてではないけど、それは女の子の友達に揶揄われるように言われただけで......
みーくんから、まーくんと私の関係をツッコまれたのは初めてだった。
その時、なぜか、心が締め付けられた。
そして、季節も食べることにおあつらえ向きな秋。
私が風呂敷包みを解くと、巨大な塔のような弁当が姿をみせる。
「おいおい、重箱かよ」
みーくんは、呆れたように肩をすくめた。
一方でまーくんは、誕生日プレゼントで欲しいものを貰った子供のようにはしゃいでいた。
「兄貴、おせちだよ。お・せ・ち。美味しそうだね」
「馬鹿、おせちじゃねえよ。匂いでわかれ」
まーくんはみーくんに突っ込まれ、首をかしげる。
「そうなの? ねここちゃん」
「うん、そんな凝ったものは入れてないよ。でもまーくんが好きなのいっぱいいれたからね」
「やったーーーー」
まーくんは諸手を上げくるくる歓喜の舞。
うれしいけど、いちいち大げさ。
みーくんはそんなまーくんをみてやれやれと言った感じでため息をついた。
私はお待ちかね―という感じに、重箱をバラしていく。
次々に姿を現すミートボール、卵焼き、ハンバーグ、鮭の切り身、白身フライ......
色んなもの食べてもらいたいなって色とりどり詰めた。
食べ盛りの男子に食事を作ると決めた以上、日頃作るものよりも気合が入ってしまったのもある。
頑張ったし、褒めてほめて~~。
「わー、すごくきれいだね。いただきまーす」
まーくんは真っ先に私が言ってほしい言葉を言ってくれた。
そういってすぐ、待ちきれないと言わんばかりに割り箸を割り、口に放り込む。
「んんーーー! おいしい!」
「ありがとう、まーくん」
そう、まーくん。そう言ってもらえると嬉しい。
「口に合わなかったらどうしよう」とか、「食べてもらえなかったらどうしよう」とか、そういった不安を踏み越えて、「作ってよかったー」という感情が込み上げる。
一方でみーくんは厳しい。
「和、洋、中、適当だな」
「お弁当にそんな節操求めちゃだめだよ」
「食い合わせとかあるだろ」
「だいじょうぶだよう」
みーくんはやっぱり褒めてくれないよね。
いや、弁当に節操なしというのはある意味誉め言葉では?
なんやかんや、食べてるし、合格ラインは達したかな。
「兄貴、そのエビフライ食べないの? 貰うね」
「あ、おい......」
まーくんはみーくんの皿から最後のエビフライを奪った。
みーくんは握りこぶしを作りながら、プルプル震えている。
あ、これは怒ってるね。
「それは最後に食べようと取っておいたんだよ」
「てっきり嫌いなものかと」
「嫌いだったら自分の皿に乗せねえよ」
あれ、それって、よく考えたら、私の作ったエビフライが好きってことじゃ。
私は恐る恐る疑問をぶつけてみる。
「エビフライ好きなのかな?」
みーくんはバツが悪そうに黙り込む。
言葉を選んでるのかな?
そして、みーくんは俯く。
「好きじゃねえよ」
まーくんはみーくんの肩をポンと叩き
「素直じゃないねえ」
と揶揄うようにみーくんに言った。
そこからほとんどまーくんと私だけが話していた。
予鈴がなり、散り散りになっていた学生が昇降口に吸い込まれ、黒山の人だかりを作っている。
私たちもそろそろ片づけて教室に戻らないと。
重箱の中を確認すると、まだ半分以上おかずが残っていた。
「量多くね」
「そうだね。半分でよかったね」
「いや、その半分でもいいだろ」
食欲の秋と食べ盛りの相互作用で、これくらい必要だと思ったんだけどなぁ。
食べ盛りの男子って難しい。
私は重箱を重ね、みーくんたちを払い、レジャーシートを畳み始める。
その作業を横でみていたまーくんは私に話しかけてくる。
「ねここちゃん、明日も作ってよ」
「うん、いいよ。何か食べたいものある?」
「えっとね、明日はエビチリが食べたいな」
「うん了解。エビチリ作っておくね」
「あ、できるだけ辛めがいい!」
「辛めにしとくね」
「ありがとう」
まーくんはリクエストを済ませると、「また後で」と一人昇降口に消えてしまった。
「はぁ」
まーくんが見えなくなると、ため息をする。
みーくんも、まーくんみたいに好きな食べ物をリクエストしたり、遠慮せずに話してくれたらいいのにな......。
まーくんとみーくんって同じ双子でも全然違うんだよね。
そういえば、みーくんはどこにいったんだろう......。
見回すと、すぐに発見する。
食堂の自販機から戻ってくる最中だったようだ。
みーくんは二本ジュース持っていたジュースの一本を私に投げた。
これは、やるってことだろうか?
間違ってたら恥ずかしいけど、ありがとうと言っておく。
「ありがとう」
すると、みーくんは右手を上げた。
そして、みーくんは突拍子もないことを言い出す。
「お前と磨雄って傍目からみて老夫婦みたいだな」
「えっ?」
私は戸惑う。
そういわれたこと自体は初めてではないけど、それは女の子の友達に揶揄われるように言われただけで......
みーくんから、まーくんと私の関係をツッコまれたのは初めてだった。
その時、なぜか、心が締め付けられた。