私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
「いつから、磨手さんって方のことを好きになったのですか?」
黒花ちゃんは興味深々で聞いてきた。
カフェに入って恋愛トークに夢中になっていた私たちは、パフェを囲むように隅の方に座っていた。
「それが、いつからかわからないんだよ~ でも好きになった一番最初のキッカケは多分あれだと思う」
黒花ちゃんはパフェを一口食べる。
一瞬、ほわぁああんと魂が抜け、すぐ現実に戻ってくる。
黒花ちゃんはスプーンを置く。
「あれ......ですか」
黒花ちゃんは聞き入る。
弥生ちゃんには何度もした話。
弥生ちゃんはそんな私たちの姿を見てニヤニヤと楽しんでいるようだ。
私は静かに話し始める。
今日の昼、夢でみたあの話。
みーくんに命を助けてもらったお話。
なんども、なんども、摩耗するくらい再生されたお話。
もうあれから10年が経った。
もしかすると脚色してしまっているかもしれないけど、それを最初から最後まで黒花ちゃんに話した。
大切なものをなくし、それを探しに大雨で荒れ狂う川辺に出かけ、私は足を滑らせ沈んでしまう。
私は水中から水面の歪んだ世界をみつめ、これは死んだなって悟った。
すると、人とは思えない抵抗できないくらいの力に私は引っ張られ、そこから私の記憶にない。
目が覚めると、裸のみーくんが私を揺さぶって名前を呼んでいた。
きっと、みーくんが私を泳いで助けてくれたんだ。
雨が降っていて自分だって流されてしまうかもしれないのに、私を助けてくれた。
これが私の想い出。
「素敵」
私の話を聞いた黒花ちゃんが目を輝かせて言った。
「でも、危険を顧みず川辺に探しに行くくらい大切なものって何をなくされたんですか?」
「お母さんにもう使わないって貰った腕時計。数万円するやつ」
「とてもいいものを貰ったのですね」
「そうなんだ。どうして私なくしちゃったんだろう」
「えっと、もしかして100円の腕時計だったらどうしました?」
「探しにいってなかったね」