私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです



「さて、黒花も好きな子話しちゃいなよ」



私の恋愛話が終わった後、弥生ちゃんが微笑みながら言った。

黒花ちゃんはもじもじしながら、顔を赤くして俯く。




「わ、私の話は葵さんのようにドラマティックではありませんから......」


私の恋ってそんなにドラマティックだったのかな......。




「恋にドラマを求めないの」


「そうそう、私は幼馴染だから人一倍想い出があるってだけだから......」


「そ、そうですね......。私も、言っていいですか?」



そう断りをいれた黒花ちゃんは、好きな人のことを話し始める。





「私、実はペンパルに会いに来たんです」


「ぺんぱる?」


私は黒花ちゃんの言った単語の意味がわからなかった。

弥生ちゃんも同じようで、首をかしげている。



「あ、ペンパルというのはペンフレンドのことです。手紙を交わしてコミュニケーションを交わす友達のことです」


「へえ、そういうのペンパルっていうんだね!」



ペンパルに会いに来たってすごくドラマチックに思えるのは私だけだろうか。

そういうツッコミはやめとく。

ごめんなさい合戦になりそうだから。



「なによ。ドラマティックじゃない。それに今時、どうして手紙なの?」



私がツッコまなかったことを弥生ちゃんはツッコんだ。

そういえば、どうして手紙なんだろう。

手紙はデジタルメールなどに置き換わってしまったという印象がある。

私なんか手紙で相手住所の書き方とか、知らないよ。



「ご、ごめんなさい。私、相手の人のメールアドレスとかSNSアカウントが分からなくって...... お互い、暗黙の了解でそこに触れてこなかったから」


「あくまでも手紙ってわけね」


「はい...... それに、私、彼の字が好きだったから......」



弥生ちゃんは微笑みながら、本題に切り出す。


「で、そのペンパルとは会えたの?」



黒花ちゃんは悲しげな顔をし俯いた。


「いえ......」


「もしかして、その子に会うために編入してきたわけ?」


「いえ、家庭の都合で引っ越ししてきたんです。編入先の学校を選ぶときに、彼の学校が近くにあるって気づいて......」


「編入先選べるって相当頭がいいのね。その頭分けてほしいわ」



そういうと、弥生ちゃんは黒花ちゃんの頭をうりうりとした。



でも、どうして黒花ちゃんはその子と会えてないんだろう?

手紙を交換してるなら、その子の名前は知ってるだろうし、うちの学校マンモス校じゃないからすぐ見つかる気がするんだけどな。



「もしかして、黒花ちゃんは、その子が休んでるとかで会えないのかな?」


黒花ちゃんは私の言ったことに少し考えたそぶりをみせた。

自分が何を聞かれているのか理解できたようだ。


「いえ、登校初日に会うことができました。けれど......」


黒花ちゃんは私の方を見て、悲しそうな表情を見せ、一瞬で微笑みに切り替える。



「私がいない間、その人には必要としてる人がいるようでしたから......」


そう黒花ちゃんは含みのあるようなことを言った。

カフェの暖房で眼鏡が曇ったのか、黒花ちゃんは眼鏡を外しセリートで拭く。




その様子をじーっと見つめてると、黒花ちゃんと目があった。

その顔はどこか忘れ去られた過去をくすぐる。




あれ、私、ずーっと、ずーっと、昔、黒花ちゃんと会ったことあるのかな?

そんなわけないよね。

うん、きっとそんなはずない。



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