私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
夜7時半。
私は部屋で宿題をしていた。
うーん。
......。
......。
二次方程式の解の公式ってどんなんだっけ?
......。
......。
私はそっとノートを閉じた。
「わからないなら、わかりませんで提出してもいいよね」
明日忘れていかないように、すぐカバンに詰め込んだ。
わかりませんが通用するなら、全部わかりませんで白紙で出しても通用するのでは。
......。
そんなふうに悪魔が囁いたが、宿題をやっていないのが私だけだったとき恥ずかしいので真面目にすることにした。
「ねここー」
頑張って残りの宿題を片付けようと思い、シャーペンを握った時に限って、お母さんに呼ばれる。
「はーい」
私は部屋から出て、一階にいるお母さんのところへ向かった。
階段を降りてる途中からカレーのいい匂いが鼻をついた。
やったー、今晩はカレーライスだ。
私の大、大、大好物!!
「ねここ。みーくんまーくんにお裾分けしてきて」
そういうと、お母さんはカレーの入った小鍋を差し出す。
きっと、みーくんもまーくんも喜ぶだろうなぁ。
小さい頃から二人ともカレーライスが好きだったもん。
「はーい」
私は小鍋を受け取った。
別に家正面だし、みーくんやまーくんらがうちに食べに来ればいいんだけど、嫌がるのは目に見えてわかっている。主にみーくんが。
私はカレーが冷めないうちに、岸野家の門をくぐる。
「みーくん、まーくん、ご飯持ってきたよー」
しーーーーーーーーーん。
こうやって呼べば、まーくんならすぐ駆けつけてくれる気がしたんだけど......。
鍋を玄関の隅に置き、上り框に乗り出すようにして、もう一度呼んでみる。
「まーーーーーくん。みーーーーーくん。いないのーーーーー??」
私の声が反響する。
そして、静寂。
よく耳を澄ませば、カチッカチッというアナログ時計の針の音やピチャッという水道水の雫が落ちる音が聞こえてくる。
つまり、不在?
私は周りを見回す。
すると、玄関入った正面のところに風呂敷とよくわからないお面のようなものが落ちていた。
よく目を凝らしてみてみると、それは......。
......。
......。
獅子舞の獅子だった。
獅子様が鎮座しておられた。
「もう、どうしてこれがこんなところにあるんだよぉ」
私は獅子に近づき、風呂敷の部分を掴む。
「まったく、こんなん持ち出して。散らかしっぱなし。というかどうしてこんなのもってるんだよぉ」
この時私はこの家に誰もいないと思い込み、油断しきっていた。
カプッ
急に視界が真っ暗になった。
あまりにも唐突に視力がなくなり、自分の置かれてる状況が理解できない。
鎖骨の部分に何かが食い込む圧迫感を感じ、後ろを見ると微かなの光が見えた。
そこから、自分が獅子の口に頭から突っ込んでるということに気づく。
......。
......。
「いやあああああああああぁぁぁあ」