私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
「さて、どういうことか説明してもらうよ」
私はみーくんをリビングのソファーに座らせ、説明を求めた。
みーくんの横には、獅子舞用の獅子と風呂敷が丸めて置かれている。
先ほど、みーくんは私の頭をそれでカプカプした。
みーくんは面倒くさそうに答える。
「お前がそこに立っていたから」
「それだけ?」
「ああ、それだけ」
それだけって。
私、あの一瞬心臓が飛び出て死ぬかと思ったよ。
動くはずのないものが動く。ポルターガイストってやつ。それを実際目の当たりにしたと思った。
私は腰が抜けてさっきまで動けなくなり、獅子の中から出てきたみーくんに支えられながらリビングに上がらせてもらった。
みーくんは鼻で笑う。
「にしても、お前って昔からホントにトロいよな。そんなんだと獅子の恰好の的だぞ」
「獅子に狙われることなんて金輪際ありませんー」
「シマウマやヌーに生まれなくてよかったな」
んきょーーー、むかつくーー。
いつもどうしてそんな意地悪言うんだよ......。
このままエスカレートしていくと、だらしなく股開けてソファーに腰掛けるみーくんに飛び膝蹴りを入れたくなってくるので、話を変えることにする。
さっきから、まーくんの姿が見えない。
「ねえ、みーくん。まーくんはどこ行ったの?」
「さあ」
「学校からは一度帰ってきてる?」
「さあ」
みーくんは答える気がない。
いつもそうだ。私と話すときは意地悪言うか、会話をしてくれないかのどちらか。
たまーに、優しいときがあるくらい。
みーくんと会話が成り立たないときは、大体私の言うことに興味がないときだ。
ふと、リビングを見回す。
カーテンが外れかけており、絨毯がしわ寄せになっているのが見えた。
よく見ると、その奥で観葉植物が倒れているではないか。
まるで強盗が入ったかのような部屋の荒れよう。
「もしかして、これみーくんがやった?」
「違う、それをやったのは磨雄だ」
もう、まーくん、帰ってきてたんじゃない。
でも、どうしてまーくんがこんなに部屋を荒らしたんだろう?
もしかして、喧嘩でもしたのかな?
「喧嘩はしてないぞ」
私が聞く前にみーくんは答えた。
「じゃあどうして」
すると、みーくんは獅子の仮面を指さす。
「これを着けて、磨雄を追い回した」
「どうしてそんなことするかなぁ......」
私は呆れて肩を落とした。
「まーくんが帰ってくるまでカレーなしだからね」