私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです


「お前ってまーくんまーくんばっかりだな」


ゲーム機を間に挟み、みーくんは私に喋りかける。


「そんなことないよー」


私はテレビ画面に映るレーシングカーに首っ丈で、それどころじゃない。



家を飛び出して逃げ出したまーくんの帰りを待つ間、私たちはテレビゲームをして時間を潰すことになった。

ひと昔前の機種で、カーレースのゲームを始めた。

みーくんが1P、私が2Pで、残り6人はコンピュータ(NPC)で競い合った。

みーくんは2位のNPCと差を開けて完全に独走しており、私は7位のNPCと差を開けて8位と最下位を独走していた。

私相手じゃ張り合いがないからか、みーくんは欠伸をしながら退屈そうにしだし、その態度がかえって私をやる気にさせた。

最下位の私がやる気満々なので、みーくんは飽きたからと投げ出せないって感じだ。


そんな最中の一言だった。




「お前って磨雄のこと好きだろ」


みーくんは淡白にそう聞いた。


「え?」


あまりに唐突すぎて、思わず画面から目を離し、みーくんの方を見てしまう。

みーくんは退屈そうに画面を眺めている。



「口を開けば、まーくんまーくんだからな」

「そうかな?」

「いつもそうだぞ、自分で気づいてないのか?」

「う、うん」


はぁ、とみーくんはため息をする。



「まあ、でも葵と磨雄はお似合いだと思う。磨雄と話してる時の葵は活き活きしてて楽しそうだしな」



私は手の届かない胸の奥底が、ズキンと痛んだ。

みーくんには、一番されたくない誤解をされている。

確かに、まーくんと話すときは楽しい。

私の言ってほしいこととか言ってくれるし。




でも、それと、恋の好きは違うのに。



どうして、みーくんは、そんなこというんだろう。


「私、そんなんじゃないよ」


そう淡白に告げた。




本当はそうじゃない理由を並べて言いたかった。

けれど、それをすると、図星を突かれて焦っているように見えるんじゃないかとか、照れ隠しをしてるんじゃないかとか、そう捉えられると思ったからだ。


そう言うと、沈黙が訪れ、テレビから流れる車のエンジン音のみが部屋に響いている。


ガチャ。


玄関の方で音がした。


まーくんが帰ってきたようだ。




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