私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです

ねここルート本編



翌日、昼。

私はみーくんとまーくんの三人で弁当を囲っていた。


「んん、ねここちゃん、この唐揚げ美味しいよ」


まーくんが一口ごとに大げさにリアクションしてくれる。

みーくんは黙々と食べていた。



弁当の量も昨日の半分以下にした。

同じ失敗は二度繰り返さないのだ。



まーくんが赤い食べ物を箸で持ち上げる。


「ありがとう!昨日言ったエビチリだね。いただきます」


そういうと、口の中へ放り込む。


何度か咀嚼を繰り返し、ゴクリっと飲み込む音が聞こえる。


私は不安になりながらじっとその様子を眺めていた。



「んん、おいしい、やっぱりエビチリだね」





その言葉を聞いて安堵のため息。


昨日の注文通り、辛めのエビチリを作ってみたんだけど、あまり作らないから口に合うか分からなかった。


味見をするにも、私は辛い物がからっきしダメで、舌がマヒして全部同じ味に感じてしまうのだ。


まーくんの口に合ってよかった。




三人で食べ続け、今日は弁当を空っぽにすることができた。

量的にも多すぎず少なすぎず、ちょうどいいくらいだった。

明日からもこれくらいにしよっと。


そんなことを考えながら、レジャーシートを畳んでいると、みーくんが私の名前を呼ぶ。


「葵」

みーくんも明日のおかずのリクエストだろうか?



「明日から俺の分はいい」

「どういうこと?」

「明日から俺は他のやつと昼ごはん食べるから」



そう告げられ、私は動揺する。



「いや、別にお前の料理がまずかったとかじゃねえから」


私が思ってた心配を先回りで答えた。


「ほら、昨日今日ってあいつら放ったらかしでこっち来てたからさ。明日はあいつらと食べたいと思ってな」


「お昼は買うの?」


「いや勿体ないから使わねえ。あいつらのおかず一品ずつ頂けばそれなりに腹膨れるだろう」


もともと、みーくんは仲がいい友達がクラスにいて、その子たちとよく昼飯を食べていた。

もし、みーくんが食べるものがないってなると、その子たちは助けてくれるだろう。

みーくんは私が思っている以上に要領が良くて......。

私のお節介に付き合ってくれていたのかもしれない。




「うん、わかった」


みーくんは私の返事を聞くと、手のひらを軽く上げ、立ち去った。


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「おーい、兄貴ー」


磨手はその声に振り返った。

すると、磨雄が後ろから手を振って走ってくる。


「兄貴、ちょっといい?」

「その前に名前呼んで手を振って走ってくるのやめろ」

「えっ、どうして?」



磨雄は首をかしげている。

磨手はため息をひとつ。



「そういうのは恋人同士のすることだ」


磨手がそういうと、磨雄は「やだなぁ」と笑いながら磨手の肩をポンと叩く。


「僕たち禁断の恋をしてるじゃないか」

「ぐああああ」



磨手の蹴りが磨雄の股間を穿つ。


「冗談でも気持ち悪いこというな」



磨雄は飛び跳ねながら蹲り、痛みの潮引きを待つ。

磨手はその場から立ち去ろうと、磨雄に背を向けた。



「待ってよ、兄貴。言いたいことがあるんだ」

「待たねえよ、禄でもないことしか言えないだろ」

「本気でいいたいこと」

「愛の告白とかいうんだろうが」

「そんなんじゃないよ」


磨手は仕方ないなと振り返る、そこには真剣な顔をした磨雄がいた。

過去にそんな磨雄はあまり見たことがない。

いつも、ふざけたり手を抜いたような軽いやつなのに。

二人を中心に喧騒が遠のいてゆく。



「なんだよ」

「ねここちゃんのことだよ」

「葵がなんだよ」

「どうして、ねここちゃんを避けるんだよ」



いつにもなく磨雄は磨手を責める。

こいつ、めんどくさいなぁ。

磨手はそう思った。



「あいつとは十分なくらいベッタリだろうが」

「それは幼馴染としてだろう」

「それでいいじゃねえか」

「本当にそれがいいと思ってるの?」



磨雄は止まらない。


「どうせ、いつかその幼馴染としての関係性も断ち切るつもりだろう」

「ああ、俺の事知ってるお前はわかるだろう」


磨手がそういうと、磨雄は黙る。

このことで磨雄には言い返すことはできない。

沈黙。



「あの日、ねここちゃんを助けたのが僕だったら......」


沈黙の中、磨雄は小言を漏らし、磨手に指を突き付ける。



「兄貴、今まで僕は兄貴こそねここちゃんに相応しいと思って気を遣ってきた......」

「おい、磨雄、何言ってんだ」

磨手は磨雄の気迫に圧倒される。



「僕ね、今日、ねここちゃんとデートするんだ」

「......」

「まあ、ねここちゃんは僕がデートと言っても本気にしてないみたいだけど」

「......」

「だから兄貴にこれだけは言おうと思ったんだ」





―――僕は本気で彼女を落としに行く。


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