私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです



5限目は体育の授業。

隣のクラスと合同で行われる。

だから弥生ちゃんや黒花ちゃんと一緒なのだ。



今日の女子の体育はバレーボール。

私は弥生ちゃんと黒花ちゃんと同じチームになった。


「ああ、暇だわーー」

私たちは一番最初に試合をして、他のチームの見学をしていた。

1ゲームの回転が遅く、手持無沙汰の時間が続いている。



「私は体育苦手だから、このままチャイムがなってくれたら......うれしいです」

黒花ちゃんは体育座りで顔を埋めながら丸くなりながら言った。


「このままじゃ希望通りになりそうよ」

弥生ちゃんは時計を指さし、それから、ハーフコートの先を指さす。



指さした先では、男子たちがバスケットボールをしている。

今グラウンドは体育祭の関係で使うことができない。

男子はサッカーのところ急遽バスケットボールに変更された。



そのため、ハーフコートしか使用できず1ゲームの回転率が遅いのだ。



弥生ちゃんには悪いけど、正直私も運動はそこまで得意じゃないので、できればこのまま授業が終わってほしい。



「男子もやる気ないやつばっかね。そこは派手にダンクとか決めてみなさいよ」

弥生ちゃんは男子の方をみて言った。



私も男子の方を向くと、ちょうど両チーム礼してコートから去っていくところだった。

「ダンクって身長が高くないとできないよね」

「そうね、ひ弱やチビだと届かないでしょうね。ああ、もう。どうしてうちの学校には高身長いないのよーー」

弥生ちゃんは嘆いた。



「みーくんやまーくんは180あるよ」

私がそう言うと、弥生ちゃんはため息を吐く。


「身長あっても甲斐性(かいしょう)がないわ」

「かいしょう? それってダンクするのに関係あるのかな?」


すると弥生ちゃんは呆れた様子で私の方を向く。

「ねここって、ホントにあの兄弟以外の男に興味ないのね」



もう、それどういうことって言う前に、弥生ちゃんは男子のコートを指さして言う。


「ほら、噂をすればご登場よ」


弥生ちゃんにつられて、私は男子コートを目を凝らしてみると、みーくんとまーくんがコートに上がっていた。

二人ともゼッケンの色が違う。


「へえ、面白いじゃない。兄弟どっちが強いか白黒はっきりするわね」

弥生ちゃんは先ほどまでの退屈な様子とは一転して、興味津々な様子だ。


「岸野くん......」

黒花ちゃんも体育座りに埋めてた顔を、みーくんたちに向けている。



私もみーくんたちが気になって男子のコートを見る。

ちょうど、ボールが宙に舞い上がり、落ちてくるところだった。



みーくんとまーくんがジャンプする。

みーくんが僅差でボールを自陣地へ叩き落とす。

ジャンプボールはみーくんが取った。



みーくんはパスを貰いドリブルして激しく上がっていく。

その勢いにまーくんチームのメンバーは怯んでいる。

ディフェンスも機能せず、そのままダンクを叩き込んだ。

その衝撃でネットがグラグラ揺れる。

その開始数秒の出来事でみーくんチームに2ポイント入る。


男子からも女子からも、拍手が上がる。

「すげー、ダンクかよ」

「ちょっと見直したかも」

周囲が感嘆の声を漏らす。


弥生ちゃんも微笑んで楽しそうだ。

「へえ、やるじゃない。見直したわ」


周りがみーくんを褒めてくれて、なぜか私は自分のことのように嬉しくなる。


でも、どうしてだろうか。さっきのみーくんは怒りをぶつけるようなプレイをしていたと思う。

私は見ていて、そのことだけが不安になった。


「それにしても磨雄の方はダメね。まるでやる気ない。あの軽さはいつものことだけど。スポーツくらい真剣にしたらいいのにね」

弥生ちゃんはまーくんを非難した。

みーくんが目立つ。その一方で、まーくんのやる気のない力の抜けたプレイにも注目された。


「磨手くんと磨雄くんって双子だよね?」

「なんであんなにやる気ないんだろう?」


きっとまーくんは性格上、そんなこと言われても気にせずマイペースを保ち続けるだろう。

けれど、私は昔からまーくんのことよく知ってるから、誰かにまーくんをそんな風に言われるのが嫌だった。

思わず、叫んでしまう。


「まーくん、みーくんも頑張ってーーー」

両手を振って立ち上がる。

隣にいた弥生ちゃんと黒花ちゃんは、いきなり私がそんなことしたのでビックリした様子だ。

とりあえず、ねここ精いっぱいの応援を送った。


みーくんもまーくんも私の方をみたので気づいたはずだ。


すると、試合が再開される。



また、みーくんがドリブルで上がっていく。

みーくんに怯んでディフェンスが機能しない。

そのまま、またダンクをする......

......。

......。

かと思われたが、ふと瞬きをしたときにみーくんはボールを持っていなかった。



反対側のコートからガタンという音が聞こえる。

まーくんチームに2ポイント入った。


「すげえ、ダンク決めやがった」

「弟の方もすげえぞ」


まーくんがみーくんからボールを奪い、速攻で点を取り返した。


そのまーくんの顔は遠くてはっきり見えないけど、そのプレイは真剣で......


私はそんなまーくんを初めてみた。





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