私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
右の方でズコーン。左の方でズコーン。
まるで運動会の玉入れをしているように妨害なく、両チームポイントが入っていく。
チーム戦なのに、まるでみーくんとまーくんだけが独走して、あとの子たちは置いていかれているように見える。
攻めと攻め、ボールをもったらすぐにゴールへ向かう。
ゲームはみーくんとまーくんの1対1になってしまっていた。
兄弟喧嘩とも思える激しい欧州。
いつしかその場に居合わせる誰もが、そのプレイを見守っていた。
残り時間もわずか。
次の1回で勝敗が決まる間際まで時間が進んでいた。
両チーム得点は拮抗、最初の一回多い分、みーくんのチームは2点リードしている。
今、ボールはまーくんが持っており、ドリブルで駆け上がっていく。
だが、みーくんはそれをさせないと、守りに徹する。
私は息をのんだ。
「これで決まる」
私がバスケやってるわけじゃないのに、心臓がドクドクと暴れる。
これで決まると考えると、なぜだか怖くて不安だ。
みーくんにも、まーくんにも、頑張ってほしい。
けれど、胸騒ぎがする。
勝敗が付くと、私たちの関係性を揺るがす何かが起きるような。
今まで通り、三人一緒でいられなくなりそうな。
そんな予感。
みーくんのガードが固く、まーくんは攻めきれない。
もはや、二人にパスという選択肢はないし、そんなことされると考慮すらしていない。
すると、まーくんは無理に攻めあがることをやめる。
「この土壇場で諦めるのかよ」
誰かがそうまーくんに投げかけた。
そして、まーくんはこちらを向き、私と目が合う。
その瞳に映ったのは、いつものまーくんだった。
さっきまでの気を張り詰めた雰囲気ではなかった。
さっきの予感は私の思い過ごしだったかもしれない。
まーくんが投げるポーズをとる。
まだゴールまで結構距離がある。
「おい、3ポイント狙うのか」
「でも勝つにはそれしかないよね」
「無理だろ、あの距離一発で決めるなんて」
みーくんはそれを見て妨害する気が失せたように、突っ立っている。
そんな向かい合う二人。
私は遠くにいるみーくんとまーくんから声が聞こえた気がする。
まーくんは言う。
「ねえねえ、こっから打ったら入るかな~」
好奇心半分、投げやり半分。
みーくんは言う。
「入るわけねえだろ、くだんねー。やめだやめだ」
入るわけないと決めつけ、興味を失っている。
きっと実際にみーくんやまーくんがそう言ったわけじゃない。
けれども、二人の姿を見ていると、そういう会話をしているかのように思えた。
長年、ずっと一緒にいたので、なんとなくそう感じてしまった。
ボールがまーくんの手を離れ、放物線を描き、ゴールへ向かう。
スカッ。
この試合、今までで一番優しい音が聞こえた。