私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです


私はカレーパフェを奇麗に平らげると、まーくんは店主の人と軽く話をし、私たちはカフェ?を後にした。


「カレーパフェ美味しかった」

「よかったら、また作ってもらうよ」

「いいの? ありがとう」



そんな長くパフェを食べていたわけじゃないのに、空は紺色を深めようとしていた。

腕時計で時間を確認すると、5のところの短針が来ている。

ちょっと午後5時でこれって日没早くない?

もうそんな時期か......。



「次どこに行こっか?」

「うーん、まーくんが行きたいところでいいよ」


カレーパフェを奢ってもらったので、まーくんが行きたいところに最後まで付き合ってあげたい。

当初の予定は、まーくんの買い物に付いていくことだったし。



「じゃあ、あのお店に行かない?」


まーくんが指さした先にあるのは、ファンシーショップだった。

女の子向けのグッズや、流行りのアニメやアイドルのクリアファイルなどが置いてあったりするお店。



「いいけど、あそこは女の子向けのグッズしか置いてないお店だよ」

「大丈夫、僕なら」

「あはは、まーくんなら大丈夫そうだね」


私たちはファンシーショップに立ち寄ることにした。

建物ない一面に広がるライトトーン。ぬいぐるみやキーホルダー、香水なんかが陳列されているのが見える。

あっ、懐かしい。このシール集めてたなぁ。

猫さんをデフォルメキャラ化のが描かれてるシールだ。

色んな種類の猫さんがいて一時期集めるのにハマっていた。

今も押し入れ探せば、シール帳でてくるかも。

帰ったら探してみよっと。



あっ、かりん だ。

私はアイドル雑誌の今人気のアイドルの雑誌を手に取る。

今学校で流行ってるんだよね。

昨年突如芸能界に現れた期待の星。

瞬く間にトップアイドルの座を勝ち取った。

今は珍しい、グループではなくソロ活動で有名になったアイドルだ。

整った顔立ち。天使のような可愛い笑顔。

みーくんもこんな女の子が好みなんだろうか。



雑誌を置き、見回すと、まーくんがそわそわしてるのが目に入る。

なんだか落ち着きがない。

トイレを我慢してるのかな?

するとまーくんは呟く。


「僕たち恋人に見えるかな?」


え?

恋人?

今更そんなこと気にしてるんだ。

別に今の状況、はた目から恋人に見えないことはないだろうけど。

どっちかというと......


「うーん。多分仲のいい姉妹ってところかな」


姉妹だと思う。

ただし、私の主観強め。


「そっか......」

まーくんは眉を下げなぜか残念そうに見えた。




「僕がお姉ちゃんで、ねここちゃんが妹?」

「違うよー。私がお姉ちゃんだよー」


これは譲れない。



私はまーくんの先の棚にあるぬいぐるみに目がいった。

私はその中の一つを手に取り、まーくんに見せる。



「くまさんのぬいぐるみ」


私の行為を不快に思ったのか、まーくんは眉をひそめた。

怒ってる?

わけではなく、少し落ち込んでるように思える。

まーくんは視線を下げ、私の腕時計を見ている。


「まーくん? 私、気を悪くさせたかな?」


私がそう言うと、まーくんは笑顔を作る。


「あ、いや、ごめん、今のは気にしないで。とても可愛いくまさんだね」


一瞬気を損ねてしまったかと心配したけど、それは私の杞憂だったようだ。





「どう? 私に似合うかな」


うーんと、考える仕草。

世の中「似合うかな」って聞くと、「似合う~」って言ってしまいがちだ。

聞く側はそのことを理解している場合が大半。

勿論、私も確信犯。


私は期待してまーくんの返答を待つ。


「いや、ねここちゃんにはクマさんは似合わないよ」



期待とは逆の返答に少し戸惑う。

まーくんなら、よく似合うって言ってくれると思った。



「そうかな......」



私はくまさんのぬいぐるみを元の場所に戻す。

戻した後も、じーっとくまさんを見つめる。

どうしてか、くまさんの瞳を覗くと、すごく懐かしい気がする。

一向にくまから離れない私に、まーくんは呟くように言う。



「ねここちゃんはクマ好きなの?」

「うーん、好きかな」

「猫よりも?」

「いやいや、猫さんが一番だよ。でも......たまにクマさんが恋しくなる気分になるかな」



私がそう言うと、まーくんは少し俯く。


「ねここちゃん、もしかして兄貴のあのこと......」


なんて言ったのか聞き取れないくらい小さな声でまーくんが何か言ってる。


「いや、そんなわけないよね。ねここちゃんがあのこと知ってるわけないし」




そういうと、まーくんの中で何か自己解決したようだ。

私には意味が分からなかった。

今日はよく、まーくんが変に落ち込んだり、含みのあるようなことを言ったりしてる気がする。

今日の情緒不安定振りは、何か悪い物食べたんじゃないかと心配になるくらい。

......。



あれ、よく考えると、昨日からまーくん、私のごはん食べてるじゃん。

もしかして、私の料理が原因?!






「ねここちゃん、このキーホルダーなんて可愛いよ」


まーくんは猫のキーホルダーを私の目の前に垂らす。


猫だ~。


可愛い!!!


「やっぱり、ねここちゃんは猫がよく似合うよ」


まーくんは笑顔で言った。


「似合うなら、買っちゃおーかな」


私はまーくんから猫のキーホルダーを手渡される。

それを持ってレジの方へ歩き出すと、「ねここちゃん」肩をトンと呼び止められる。


「それ、もうお会計済みだよ。今日付き合ってくれたお礼」

「あ、ありがとう」



なんか、今日は貰ってばっかりで悪いなあ。

そうだ!


「じゃあ、こっちの犬さんのキーホルダーは私がまーくんにプレゼントするよ」

「え、そんな、いいのに」


まーくんは遠慮するが、私は犬のキーホルダーを持ってレジへ向かう。


「カレーパフェなんて素敵なもの貰ったお礼だよ」




遠慮気味だったまーくんも、私がレジを抜けた途端、嬉しそうになった。

私はまーくんのカバンに犬のキーホルダーをつける。

うん。良き。



「うん、やっぱり、まーくんは犬さんだ」

「どうして、僕が犬なの?」

「弥生ちゃん家の犬さんはちょっぴりスケベだけど優しくて大人しくて賢いんだよ。よく弥生ちゃんとまーくんみたいだねって話してるんだー」


まーくんは大げさに後ずさり吃驚のリアクション。

「な、なんと、犬の分際で僕のようなのが存在したとは......」



まーくんはカバンに付いた犬のキーホルダーを追いかけてクルッと一回転。

そして笑顔で言う。



「ありがとう、大切にするよ」



やっぱり犬だ。



「私もねこさんのキーホルダー、大切にするね」




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