私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです
今、私たちは、桜紅葉の堤防を駆けている。

駆ける。駆ける。駆ける。



......。

......。




「待ってよーーー、みーくん、まーくん」



私よりも十数メートル先に走る双子の兄弟。

私はその後を追いかけている......。



みーくんたちがもたもたしていたせいで、走らなければ学校に遅刻する、そんな瀬戸際に追いやられてしまった。

私、朝5時起きだよ?

どうして、こんな目に遭ってるんだろうか。



「はぁ、はぁ、はぁ......」




私はすでに肩で息をしており、足がもつれそうになりながらも、足を回転させる。




みーくんもまーくんも、さすがは男子と言うべきか、ジョギングをしているように走るリズムを乱さない。

小学生の時は私の方が早かったのに......。

今じゃ、背中を見失わないように追いかけることしかできない。





そんな鈍足の私を肩越しにみた二人は、途中立ち止まり振り返る。


「遅いぞ葵、置いていくぞ」

「ごめん、ちょっと僕たち早すぎたね」



みーくんたちの場所にたどり着くと、私はへばって屈む。

もう、だめだ。

このまま走り続けると、死んでしまう。



立ち止まった途端、身体の内側からもわんとした熱があふれ出し、外側からは秋涼(しゅうりょう)の風が汗とタッグを組んで冷やしてくる。


「こりゃ、だめだね。兄貴、ちょっと歩こうよ」




まーくんがそう言うと、みーくんはカバンの中をまさぐりだした。

顔をしかめていて、不機嫌そう。

私が遅いから、そんな顔をするんだよね。




「ごめんね、みーくん」





私がそう言うと、みーくんはカバンの中からタオルを取り出し、私の首にかけた。


「もう、グロッキーかよ。汗たらたらでみっともねー。それで拭いて息整えたら、また走るぞ」



みーくんは私と視線を合わせることなく、そういい捨てた。



そう、みーくんはいつもそうだった。



私にはご無体なことよくいうけど、そこに優しさが見え隠れするときがある。



だから、私は......。






「でたー、兄貴の照れ隠しー」


ドスッ。


まーくんは鳩尾をやられてうずくまった。


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