【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「アイリーンさん。顔色が悪いけれど、疲れたかい? 曲の途中だけど抜ける?」
 フランシスが気を遣ってか、そのようなことを口にする。
「いいえ。大丈夫です。この曲が終わるまでは」
 アイリーンは答えたものの、何か嫌な予感がしてならない。なんとなく予感の原因もわかっている。イブライムと踊ってフランシスとまで踊ったら、いろんな意味で視線を集めてしまうのだろう、と思う。
 ほら、また冷たい視線を感じる。その先をたどると、今度はイブライム。心の底からごめんなさいを連発。二人の仲を邪魔する気は一切ありません。

 曲が終わればフランシスに手を引かれ、そこから離れる。
「疲れただろう。何か飲み物でも」
 優しく声をかけてくれるが、アイリーンとしてはもう壁の花になりたい。いいえ、けっこうです、とフランシスに声をかけようとしたところ、足がもつれた。フランシスもそれに気付いた。倒れてくる彼女を自分の肩で支える。

「やはり、疲れたんじゃないのかい? 顔色がいいとは、けして言えない」
 アイリーンの身体がふわりと浮いた。文字通りに浮いた。足がついていないのだ。フランシスの顔を下から見上げる形になった。
「奥の部屋で休んだ方がいいよ」
 こ、これは。いわゆるお姫様抱っこというやつではないか。
「大丈夫です」
 と言って、おろしてもらおうとするが、フランシスはそれを許さない。強制的に別室へと連れていかれる。ソファの上におろされた。
「慣れない国で、慣れない生活で疲れたんだろう。生徒会の仕事も手伝ってもらったし。無理をさせて悪かったね。今、何か飲み物をもらってこよう」

< 112 / 365 >

この作品をシェア

pagetop