【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 時は少し遡る。

 フランシスが部屋を出ていったから、少し目を閉じたアイリーン。別な人物が部屋に入って来て、それがイブライムであることに気付いていた。でも彼は、アイリーンが寝ていると思っているのか、声をかけることもせずこちらを見ていた。ソファが沈んだのを感じたので、多分、隣の空いているところに座ったのだろう、と思う。
 うーん、どうしよう。体を起こした方がいいのか、このまま寝たふりをするのがいいのか。恐ろしくて目を開けることもできない。
 アイリーンが首を預けているひじ掛けに、彼は手を置いたらしい。壁ドンならぬ、ひじ掛けドン。首元に彼の息がかかるのを感じた。逃げたいけど、逃げられない。

 と、その時。

 ビシャっと何かしら胸元に冷たい感触があった。そして、先の二人の会話。アイリーンは身体を起こした。
「エル」

 アイリーンが名を呼んだ彼女は、なぜか今にも泣きそうな顔をしていた。
「リーン、ごめんなさい。つい」
 ノエルが謝った原因がわかった。ビシャっと、アイリーンのドレスにも冷たい液体がかかっていた。
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