【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 次の日。モントーヤ伯に礼を言って発つ。
 プーランジェとアスカリッドは、自動車で二日かかる距離。休憩をいれず、一日中走れば着く。近いようで遠い、遠いようで近い、その二つの国。それでも言葉の壁はまだまだ高い。商売のやり取りはあるけれど、その言葉の齟齬によって生じるトラブルも少なくはない。

「リーン。手紙に書いてあったアスカリッドでの本の出版の手伝いだが」
 何かを考えていただろう父親が、頬杖をついたまま言葉を続ける。
「是非とも引き受けなさい、という陛下のお言葉だ」

「よろしいんですか?」
 アイリーンは隣に座る父親に身体を向けた。本当は勢いでアデライードの頼みを引き受けてしまったから、国の方から許しが出なかったらどうしようか、とも思っていた。
「陛下がおっしゃるには、プーランジェとアスカリッドが協力して一つのことを成し遂げるということは、今後の互いの国の文化発展に貢献できるのではないか、ということだ」
 その文化発展が甘美小説でさらにビーでエルな内容でもいいのだろうか、とやや不安になる。

「先方にもあらためて私の方から手紙を出そうと思うのだが、問題は無いね?」

「はい、よろしくお願いします」

 向かいに座っているモイラは、笑みを浮かべて二人の話を聞いていた。彼女は余計なことに口を出さないし、必要なときは口を出す。だからアイリーンも信頼している。
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