【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 そしてまだ身分の低い者の方がお互いの国を受け入れていて、モイラの両親のように国をまたいだ婚姻というのも珍しくはなかった。ただ、王族をはじめとする高位貴族。そこが、昔のことを引きずっているのだ。だから、公爵令嬢であるアイリーンが隣国に留学するというのは、かなりのインパクトを与えることになるだろう。両国にとって。

「それから、隣国までの移動は馬車ではなく、自動車を使いなさい」
 自動車は、地下資源が豊富なプーランジェだからこそ、普及している乗り物だ。馬車にエンジンを取り付けたものだが、その燃料は地下資源のうちの一つである石油。自動車は馬車と同じ道を走るが、その速度は馬車よりも速い。また、馬車のように途中の(うまや)で馬を交代する必要もない。

 この王都と隣国の王都、つまりアイリーンの留学先となる学院のある場所までなら、自動車で約二日の旅。王族なんかはこれでよくお互いを行き来している、はず。

「それから、リーンが隣国に向かう日は、私も同行する」

「え?」
 父親の申し出にアイリーンは困惑する。だって、父親がついてきたら、道中にモイラと一緒にビーエル話で花を咲かすことができないではないか。

「手続きのために行く必要があるだろう?」
 そうなのか? 手続きは事前に書類のやり取りだけでできないのか?

「そうですね」
 アイリーンは優雅に笑みを浮かべて、そう答えるのが精いっぱいだった。モイラとのビーエル話は、現地でのお楽しみにとっておこう、と思った。
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