【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 ちょっとはずれのアデライードの屋敷に着いた。執事に迎え入れられ、部屋へと案内される。

「久しぶりね、リーンちゃん。エルちゃんは五日ぶり」

「ご無沙汰しております、アディ先生」

「そうやって呼ばれるのはこそばゆいけれど、今日はお仕事だから仕方ないわね。では、早速見せてくれる? エルちゃんはそっちで本でも読んでいて」
 一人除け者にされたノエルはぶーっと唇を尖らせたが、その目は笑っていた。
 アイリーンは休暇中に描いた絵をアデライードに手渡した。渡す時、その手が少し震えていたことに自分でも気づいた。

「そんなに緊張しなくていいのよ」
 アデライードの顔は優しい。その優しい顔のまま、アイリーンの絵をじっくりと見ている。紙をめくる音だけが聞こえる。この静けさでは、自分の心臓の音がアデライードにまで聞こえるのではないか、と思えてしまう。

< 255 / 365 >

この作品をシェア

pagetop