【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 発芽の月になった。この月は農作物にとってもいろんな芽が出てくる月。もちろん、花壇の花だって蕾を大きくして、今か今かとその花を咲かせる準備をしている。
 ここにも一人。その才能の花を咲かせた少女がいる。もちろん、その名はアイリーン。春らしい明るい色のワンピースに身を包み、つばの広い帽子をかぶってその表情を隠しながら、いつもの噴水の前で人を待っていた。

「待たせたね」
 言いながらやって来たのは、アデライード。いつものように茶色い長い髪をハーフアップでまとめている。こうやって並んで立つのは初めてかも知れない。アイリーンよりも頭一つ分、背が高かった。

「アディ先生、いつもと雰囲気が違くありませんか?」

「外に出るときは、あのキャラは封印されているからね」
 誰に、とは聞きたかったけれど。

「エルが来れなくて残念ですね」
 アイリーンが言う。

「そうだね。彼女も今日のことは楽しみにしていたんだけどね」
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