【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「それに、私のサインなんていつでも書いてあげるわよ」

「それでは意味がありませんから」

「アイリーンちゃんて、面白いわね」

「アディ先生、素が出てますよ。そろそろキャラ作ってください。始まりますよ」

「はいはい。では、そろそろ行こうかな」

「はい。私も並びますので、サインをお願いしますね」

「ああ、わかっている」
 キャラを作ったアデライードはいつもの五倍増しで恰好良い。
 アイリーンは、そそそと誰にも気づかれないようにバックヤードから出た。サイン会の列は伸びている。
 キャーという黄色い声が湧いた。アディ、とかアディ先生とか、そんな声があがっている。ただでさえ見目整っている男性だから、女性からキャーキャー言われるのもわかるような気がするし、アイリーンのように大好きな先生というそれだけで、キャーキャー言えてしまう。
 アイリーンは列の後ろに並んだ。それと同時にこの列に並んでいる客層を観察する。やはり女性が多い。年代は、下は十代中盤から上は五十代くらいまで。年齢幅は広いらしい。男女比でいけば圧倒的に女性。ちらほらと男性の姿も見えるが。
 アイリーンの耳には後ろに並ぶ女性同士の会話が耳に入った。思わず素敵な絵で買ってしまった、という言葉が耳に飛び込んできたときは、顔がにやけてしまった。
 アイリーンの番がきた。アデライードは慣れた手つきでサインをする、と同時に、御礼をしたいからちょっと待っててねと小声で言われたので、その言葉に頷いた。併設されているカフェへと向かう。
 カフェで飲み物を注文して、ノートを開いた。溜まりに溜まったアイディアを放出する。
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