【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 卒業パーティも終われば、新学年が始まる狩りの月まで学院は休み。部活動で学院に足を運ぶ者もいれば、まるっと休む者もいる。

 アイリーンは、この休みを利用してプーランジェヘ帰国する予定である。そして、学院が始まる五日前。つまり、月雲シリーズの七巻と漫画版の一巻が発売される一日前に、アスカリッドに戻ってくる予定だ。
 いつものように父親が迎えに来て、アスカリッドの陛下に謁見して、お偉い人たちと会議をして、という流れ。ボイド公爵が会議を終え、その部屋を出ようとしたとき、イブライムが公爵を呼び止めた。
 通訳が必要かと思って、アイリーンはそっと父親の隣に並ぶが、イブライムからいらない、と言われる。また、この二人での密談か、と思った。とにかくアイリーンは少し離れたところで待機することにした。多分、二人が交わした会話は二言、三言。お互いに、始終笑みを浮かべている。会話が成り立っているのかは謎だが。

「待たせたね」
 イブライムとの密談が終わったのか、父親がアイリーンの元へと歩いてきた。
「リーン」
 名前を呼ばれたので、父親の方に視線を向けると、また右手の親指を立てて喜んでいる。その謎のジェスチャーをやめていただきたい。

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