【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「なぜだろうね」
 そこでイブライムはふふっと笑った。劇場に着くと、やはり二組に分かれた。ノエルがとったチケットはボックス席らしい。しかも二席も。

「リーン。劇場に護衛はいない」
 席についた途端、イブライムが言った。
「だから、リーンと芝居を見に来たかった。これなら、デートになるだろ?」

 そういうことか、とアイリーンは思った。思ったけれど、気の利いた返事はできない。ただ、そこまでして二人きりのデートを考えてくれたイブライムの気持ちは、正直嬉しい。

「はい」
 嬉しすぎて、そうやって返事するのでせいいっぱいだった。うん、嬉しすぎるんだけど、見る芝居がこの月雲ってどうなんだ? という気持ちもある。
 開演までにはまだ少し時間があった。飲み物を頼んで、それを飲みながら待つ。

「リーンからもらった本だが。あまりにも続きが気になって母から原作を借りてしまった」

< 352 / 365 >

この作品をシェア

pagetop